「3年以内に辞める若手は根性なし」という批判が、時代遅れになった理由:ポスト平成の転職論(3/3 ページ)
売り手市場が続き、転職が活発化している現代においても、「新卒として入った会社には最低3年は在籍したほうがよい」「3年で辞める若手は根性がない」といった説をよく耳にする。この説はどれほどの正当性があるのか。なぜこのような説が生まれるのか。識者に聞いた。
若手の流出防止に取り組む企業も
ただ、若手の外部流出が長年続く状況下で、企業も手をこまねいているわけではない。若手社員に長く働いてもらうべく、雇用側もさまざまな工夫を始めている。
若手に複数の部署を一定期間ローテーションさせて適正を見た後に、一人一人に合った仕事を任せるという、一部の大企業で定着しつつある制度がその代表例だ。また、「これはやりたい仕事じゃない」「他の部署や企業のほうが活躍できるのでは」といった不満やフラストレーションを抱える若手を部下に持った場合でも、業務の醍醐味を伝えてモチベーションを上げ、戦力化するスキルを持つ優秀な管理職の育成に注力する企業も出てきている。
人材の採用・育成に詳しい、リクルートキャリア 就職みらい研究所の増本全所長も「若手社員の教育を担う『ミドルマネジメント層』の研修を強化している企業は多い。『ダイバーシティー(多様性)』が叫ばれ、多様なバックグラウンドや価値観を持つ若手が入社してくるため、一人一人の資質に応じて的確にモチベートする能力が重視されている」と解説する。
ビジネス界の採用・配属の仕組みの課題を指摘した佐藤教授も、企業が若者の定着に取り組んでいることは評価できると考えている。「大卒男性より離職率が高い大卒女性の採用が増えたほか、製造業よりも離職率が高い小売業やサービス業への入職者が増えたにもかかわらず、入社後3年までの離職率が3割程度に維持されているのは、若手の離職防止に向けた企業努力が奏功しているためだ、という見方もできる」(佐藤教授)という。
昭和の価値観は“ポスト平成”の時代にそぐわない
これからの転職市場について、「リクナビNEXT」の藤井編集長は「当分は活況が続き、求人数が大幅に乱高下することはないだろう」と予測する。“転職先”という受け皿がそろっている状況下で新卒入社した若手をつなぎとめる必要があるため、企業側はさらなる奮起が求められそうだ。
その一方で、努力を怠った企業から若手が去り、外部に活躍の場を求める流れも当分は避けられないだろう。5月に控える改元で「平成」が終わる今の時代に、終身雇用・年功序列が当然だった「昭和」の価値観のもと、成長を求めて転職する若手を「根性なし」と断じるのは、もはや時代遅れだ。
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