【第4話】社長にプレゼン、いざ!:「働き方改革」プロジェクトリーダーを命ず(2/2 ページ)
事前に綿密な打ち合わせをした日野下と竹中は、働き方改革に対する小田社長の思いを伺い、改めてリーダーシップをとってもらうよう、プレゼンテーションに臨んだ。
残業削減プロジェクトではない!
竹中: 「目についたところをロボット化するというレベルではなく、部門横断的な視点も含めて業務改革施策を出し切る、というゴール設定であれば妥当です。事例から考えてもスピーディです」
小田: 「いいだろう。部門任せで、時々、経営会議で触れるといったレベルでなく、しっかりした体制とそれぞれのコミットメントを確保して短期集中で検討しよう。それで、いつキックオフできる?」
日野下: 「既に関係者のスケジュール調整を進めておりまして、来週の後半か再来週には一堂に会してキックオフを行う考えです」
小田: 「日野下さん、竹中さん、短期間に立て直しプランを考えてくれてありがとう。ただ、キックオフに向けて、まだ、欠けているものがあるだろう?」
日野下: 「はい。今日の後半パートはそのお話しになります。この半年の『働き方改革』は多くの社員には残業削減プロジェクトと受け止められています。その意義や目標については、課長クラスでも分からないと言っている者がおります。その反面、私が先日社長に伺ったのは、わが社が抜本的に仕事のやり方を改め、場合によってはこれまで『正』とされてきたことを覆してでも、この半年間とはケタ違いの成果、つまりは余力を生み出していく、というビジョンでした」
小田: 「うむ。半年前に経営会議で一席ぶったんだが、役員の中にも本気で受け止めていない人が多いようだ」
日野下: 「はい。そうした社長の思いをキックオフで発信していただき、併せて目標感も示していただきたいのです」
小田: 「分かった。なぜやらなきゃならないのか、目標感や時間軸を明快に語るとしよう。竹中さん、他に何か気を付けておくべきことはあるかね?」
竹中: 「ありがとうございます。トップからの発信は非常に重要です。ですが、最終的には部長さん、課長さんのやる気に火をつけ、彼らの視座をあげて抜本的なアイデアを出すよう促さねばなりません。命令して結果をチェックし、叱責するだけでは成果が出ないのです。そういう意味では、単純な『トップダウン』ではないんです」
小田: 「具体的には、どうすればよい?」
竹中: 「改革の対象を現場に決めさせず、機会の大きそうな業務を全社観点で選ぶことが最も重要です。次にアイデアや考え方を現場にインプットして視野と思考を広げること。そして、抜本的なルールの変更、制度変更など会社の『前提』を変えたいのであれば、エスカレーションするよう促し、経営が決断してあげることです。この3つのことを行う場が直下型のステアリングコミッティなんです」
(続く)
【解説】直下型のプロジェクト推進体制イメージ
業務改革成功例の多くで類似の体制が採用されている。重要なのは、まず、ステアリングコミッティを形骸化させないことだ。あるサービス業の事例では、会長、社長、取締役が毎回必ず出席し、部長に見解をただし、議論していた。次に、業務設計チームをボトムアップ化させないことも肝要だ。本文でも触れているが、そのためには、外部知見、事例、割り切りアイデアを注入する存在(ここではコンサルタント)を配することと、部長が目先にとらわれない広い視点で改革機会の仮説を持ち、検討を促していくことである。
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