我々はこれからもオフィスで働く必要があるのか?:ポスト平成の働き方(1/4 ページ)
リモートワークが普及し、自宅やコワーキングスペースなどで仕事をするビジネスパーソンが増えつつある。今後こうした動きはますます活発化する中で、これからもオフィスで働く必要はあるのだろうか……?
特集「ポスト平成の働き方」
2019年5月1日に元号が変わり、新たな時代が幕を開ける。平成の約30年間でビジネス環境は大きく変化した。その最大の要因はインターネットの登場である。しかし一方で、働き方や企業組織の本質は昭和の時代から一向に変わっていないように思える。新時代に突入する中、いつまでも古びた仕事のやり方、考え方で日本企業は生き残れるのだろうか……? 本特集では、ポスト平成の働き方、企業のあるべき姿を探る。
第1回:「平成女子」の憂鬱 職場に取り憑く“昭和の亡霊”の正体とは?
第2回:「東大博士の起業家」ジーンクエスト高橋祥子が考える“ポスト平成の働き方”
第3回:「3年以内に辞める若手は根性なし」という批判が、時代遅れになった理由
第4回:本記事
朝の満員電車の中で押しつぶされながらオフィスに通勤する。数十年間にわたって日本の都心部ではそれが当たり前だとされてきた。「働き方改革」がこれだけ叫ばれている今でさえ、多くのビジネスパーソンはこの“呪縛”から抜け出せないでいるのが現実だ。
しかし、日々経験している人なら分かるだろうが、東京の満員電車は常軌を逸している。国土交通省の調査によると、2017年度の東京圏の主要区間における平均混雑率は163%。とりわけピーク時に180%を超えるのは、東京メトロ東西線(199%)やJR横須賀線(196%)、東急田園都市線(185%)など11路線に上る。これが都心のオフィスに通うビジネスパーソンにとって大きなストレスになっているのは間違いない。
日本全体は人口減少の一途をたどっているが、東京は例外的に人口が増え続けている。東京都政策企画局の分析では、2025年の1398万人をピークにようやく減少に転じるようである。つまり、都心のオフィスに出社するという現在のワークスタイルが変わらなければ、通勤ラッシュのストレスは軽減されるどころか、さらに大きくなっていくのだ。
また、オフィスの賃料は高騰し続けている。不動産大手の三鬼商事によると、東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の2019年1月時点の平均賃料は2万1010円で前年同月比8.65%上昇した。平均賃料の上昇は61カ月連続で、9年10カ月ぶりに2万1000円台となった。こうした固定費の増加は都心にオフィスを構える企業にとって痛手である。
他方、昨今はリモートワークが浸透し始めており、自宅だけでなくカフェやコワーキングスペースなどで仕事をする人が増えている。もはや働く場所は絶対にオフィスでなければならないというのは名実ともに崩れ去っている。
実際、オフィスをなくした企業もある。実業家の孫泰蔵氏が社長を務めるスタートアップ支援事業会社のMistletoe(ミスルトウ)は2018年7月にオフィスを閉鎖した。テクノロジーの活用によって今ではほとんどの仕事がオンライン上で可能であるため、物理的なオフィス空間の必要性を感じなくなったのが理由だという。
日本を代表する“プロ経営者”の松本晃氏も、自宅で成果を上げる仕事をするなら社員はオフィスに来なくてもいいという考えを持つ(関連記事)。今後オフィスは完全になくならないにしても、徐々に機能もスペースも縮小していくのではと見ている。
ますますこうした動きが活発になる中、果たしてオフィスという場所は今後も必要なのだろうか。
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