我々はこれからもオフィスで働く必要があるのか?:ポスト平成の働き方(2/4 ページ)
リモートワークが普及し、自宅やコワーキングスペースなどで仕事をするビジネスパーソンが増えつつある。今後こうした動きはますます活発化する中で、これからもオフィスで働く必要はあるのだろうか……?
リモートワークの課題
海外で暮らす日本人のスキルシェアサービスを提供するトラベロコに勤める平林磨衣さんは、特別な事情がない限り、毎日自宅で仕事をしている。同社は全社員がリモートワークというユニークな会社だ。物理的なオフィスは名古屋と東京にあるもののシェアオフィススペースで、「月に1回程度、郵便物などを取りに行くくらい」と平林さんは話す。
社員は現在8人で、日本だけでなくポーランド、アルゼンチン、ベトナムなど世界中に散らばっている。年に1度、全社員が一堂に会す総会があるものの、参加できない人もいるので、お互いにまだ直接会ったことがない社員もいるそうだ。不都合はないのだろうか?
それでも、マーケティングや広報、システム開発といった業務は完全に分業なので、各自がきちんと力を発揮すれば会社の仕事は問題なく回る。社員同士の情報のやり取りはSlackを使い、電話会議で週次の定例ミーティングを行っている。
直接顔を合わせなくても確かに仕事はできる。しかし一方で、課題も感じていると平林さんは言う。例えば、ちょっとした会話ができないことがストレスに感じたり(Slack上に「雑談」というチャンネルはあるそうだが、当然テキストベースだ)、ほかのメンバーが業務で困っているときや悩んでいるときでも、直に接していないため表情などが分からず、気付かないで過ごしてしまうことがよくあるという。もし自分が悩みを抱えたときでも、オンラインではなかなか相談しづらい。
「リモートワークによって誰にも邪魔されず自分のペースで仕事ができるようになりました。オフィスで働いていると、忙しいときに声を掛けられたり、電話がかかってきたりと、そういうのに煩わしさがありましたから。ただ、いざ一人で仕事をするようになると、かえってその煩わしさが働く上で大切なんだと気付いたのです」
これは「ないものねだり」と言えなくもない。しかし、このちょっとした、ささいなコミュニケーションが、企業というチームで働くためには重要だということを平林さんは再認識したのである。
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