新型特急「Laview」が拓く、“いろいろあった”西武鉄道の新たな100年:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)
西武鉄道は新型特急「Laview」を公開した。後藤高志会長は「乗ることを目的とする列車に」と強調。西武特急に対する危機感が表れている。この列車の成功こそ、“いろいろあった”西武鉄道を新たな100年へと導く鍵となりそうだ。
昭和世代の関東の人々は、鉄道会社と特急の関係をよく知っていた。各社が広告合戦をしたという背景もあって、箱根は小田急「ロマンスカー」、日光は東武特急、成田山は京成特急、三浦半島は京急快特、そして秩父は西武「レッドアロー」だった。しかし、ネットが普及した現在、目的地までのルートは乗換アプリから教わる人のほうが多い。若い人は先入観がないから、必ずしも西武特急を連想しない。
東武東上線の動きも気になる。池袋と秩父鉄道に接続する寄居を結ぶ東上線は、3月16日から「川越特急」を走らせる。特別料金は不要だが、観光アテンダントが乗車する。この「川越特急」と同じような手法で寄居行きの「秩父特急」が走り始めたら、そして、過去に実施したような秩父鉄道直通運転が行われたら、「レッドアロー」の手ごわいライバルになるだろう。レッドアローは湘南新宿ラインと東武東上線の挟撃を受ける。
「楽しい」でライバルをリードする「Laview」
もはや西武鉄道の特急は秩父へ行くために「便利」な列車ではない。そうなると「楽しい」要素で人々に認知してもらう必要がある。後藤会長がいう「乗ることが目的となる列車」にならなくてはいけない。
その視点で考えると「Laview」には「楽しい」要素がいくつもある。最大の「楽しみ」は大きな窓だ。縦1350ミリ、横1580ミリの窓は、下端部が着席時の膝より下にある。ただし、座席は腰を包み込むかごのような形状で、外から太ももあたりは見えにくい。窓もよく見るとフチに多数のドットがあってのぞき見を遮る。女性の意見だろう。
試乗会では大きな窓を楽しめた。プラットホームの黄色い点字ブロック、踏切通過時の遮断機、隣の線路も見えた。試乗区間は小手指から池袋までの市街地だったけれど、秩父線の築堤や鉄橋を渡るときは、かなり迫力のある車窓になるだろう。実際に乗ってみたくなる。
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