働き方改革で残業が減らない理由 ちっとも進まない「経営者改革」:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)
働き方改革について7割の人が「実感なし」と回答したアンケート結果が話題になった。「長時間労働の削減」が改革の代名詞のようになってしまっているが、本来はそうではない。生き生きと働ける社会にするために必要なのは「経営者改革」だ。
必要なのは「経営者改革」
残業をなくせば、働く人たちがイキイキするわけじゃない。会議を減らせば、働く人たちがイキイキとするわけじゃない。有給を取りやすくすれば、働く人たちがイキイキとするわけでもない。
イキイキと社員が働いている元気な職場では、残業も減るし、無駄な会議も減るし、有給もちゃんと取れるようになります。当然、それは一朝一夕にできるわけではなく、時間をかけて丁寧にタネをまき、水をあげ、育てる必要があります。労働基準法を無視し続けてきた企業なら尚更のこと。組織に染みついた病根を取り去るには、「たとえ一時的に業績が下がったとしても、必ず将来の発展につながる」という経営者の覚悟も欠かせません。
トップの覚悟は間違いなく社員に伝わります。「やっぱり従業員が自らの勤務や業務、時間管理の在り方を考え、効率的に業務をこなそうという気持ちにならない限り、本質的に残業なんて減らない」。これは5年がかりで残業削減と生産性の向上に成功した企業の社長さんがおっしゃっていた言葉です。
……今の日本に必要なのは、「働き方改革」でも、「働かせ方改革」でもない。「経営者改革」なのかもしれません。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)
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