「本業と無関係」「10年かかる」 キャビア養殖に挑む電線メーカーの生き残り術:新事業を選ぶ“2つの条件”(3/5 ページ)
ケーブル・電線メーカーの金子コードは、本業から懸け離れた、事業化に10年かかる「キャビア養殖」に参入した。なぜ畑違いの新事業に挑むのか。その背景には、10年かけて育てた新事業に救われた経験があった。金子智樹社長に、新事業の考え方を聞いた。
ゼロから生み出す新事業、二つの条件
倒産の危機を迎えていたころ、38歳で就任した金子社長は、就任から最初の9年間を第1ステージと考え、会社の立て直しに力を注いだ。リストラもしながら、将来性のある医療事業への投資を強化。ケーブル事業でも、需要拡大が見込める産業用ロボットの分野に参入した。その結果、停滞していた売上高は成長基調に変わり、営業利益率10%も達成した。
そして、その次の9年間の目標として、ゼロから新事業を生み出す「ゼロワン」を掲げた。「メディカル事業を立ち上げて育ててきた社員はみんな50歳を超えました。このままでは、新しいものを生み出すことができる人がいなくなってしまう、という危機感があったのです」と金子社長は話す。
会社が継続していくためには、目先の利益を確保することではなく、新しい挑戦が必要。医療事業の経験から、それを実感していた。新事業立ち上げを経験した世代がサポートできるうちに、新たな芽を育てたかった。
では、何をやるか。金子社長は電線事業のトップを務める幹部社員を呼び出し、こう告げた。「金も時間も好きに使っていいから、新しいビジネスを探してほしい」
そして、二つの条件を出した。一つは「今の事業の延長線上にないもの」。既存事業を生かせる事業であれば参入しやすいが、「それではゼロワンにならない」。ゼロから事業を立ち上げる経験を積みたいと考えていた。そして、もう一つが「2〜3年で事業化できるものではなく、時間がかかるもの」だ。
「これは、中小企業としては正しい選択だと思っています」と金子社長は強調する。「大手企業の社長は在任期間が短く、10年かかる事業にはなかなか参入しないのでは。オーナー企業だからこそできるのです。後に大手が参入してきたとしても、事業化に時間がかかるので、有利に進められます」
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