スーツ姿のビジネスマンが「時代遅れ」になる日:世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)
米金融大手ゴールドマン・サックスが社内のドレスコードを緩めると発表した。米国企業では、職場の服装がカジュアル化しつつある。ビジネススーツが「過去の産物」となる日も遠くないかもしれない。
ゴールドマン・サックスの狙いは「働き手の確保」
今回のゴールドマン・サックスの一件では、ドレスコードの緩和の背景に、実は「働き手の確保」があるという。
というのも、今の若者はカジュアルな格好で働ける職場環境を求めているからだ。若者には堅苦しいスーツで出勤するという働き方はあまり好まれない。ゴールドマン・サックスでは職員の8割近くが1981年以降に生まれたミレニアル世代や90年代半ば以降生まれのZ世代で、30代以下。幹部らが彼らにフレキシブルさをアピールしたと見られている。
さらに、ミレニアルやZ世代は現在、米国の全労働力の4割を占めていることから、優秀な人材を獲得するためにはやはりドレスコードはプラスにならない。その世代が注視している現代の「成功者」には、軒並みスーツのイメージがない。Google共同創設者セルゲイ・ブリン、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグ、Tesla(テスラ)のCEOであるイーロン・マスクなど、時にスーツ姿も見かけるが、Tシャツなどカジュアルな服装のイメージが強い。
今の時代にはカジュアルな雰囲気を出す必要があると、ゴールドマン・サックスの上層部が感じたということだろう。そうしなければ、GoogleやFacebookなどに優秀な人材を奪われてしまいかねないからだ。
要するに、これからの時代は厳格にスーツ着用を求める企業は古くさくなっていく可能性が高い。ミレニアルやZ世代を見て育つ、その後から来る世代は、さらにカジュアル傾向が強くなると考えられる。スーツが「懐かしい」なんて言われる時代が来るのは時間の問題かもしれないのだ。
とはいえ、ゴールドマン・サックスのニュースを見ると、個人的には「クライアントの期待に反しない服装で」と言う部分が引っ掛かる。そんなことを言われると何を着たらいいのか困ってしまいそうだからだ。それならスーツの方が無難で楽な気もするし、何を着ていこうかと考える余計な時間を取られることもない。
ただ米国の労働環境の推移を見てみると、おそらく、今のZ世代あたりが「クライアント」の多数を占める頃になれば、彼らはビジネス相手がTシャツだろうが気にしなくなるだろう。その時代になれば、スーツが過去の産物となってしまうことは間違いない。
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