「隠すことは何もない」? ネットの“のぞき見”、鈍感さに潜む危険:世界を読み解くニュース・サロン(5/6 ページ)
タクシーの配車アプリなど、ネット上のプライバシー問題が注目されている。この問題について「隠すことは何もないから気にしない」という主張が根強くあるが、本当にそれでいいのか。自分の情報を“見られる”ことの本当の問題とは?
“興味本位”でのぞき見されてしまう危険
こうやって見ていくと、やはりプライバシーを軽視するのは賢明ではないと感じる。
ただもちろん、こうした話も、決してFacebookなどのSNSやGoogleなどが悪いのではない。なぜなら、こうした企業はそもそも、無料で私たちが使えるサービスを開発・提供し、その代わりに、データを集めて広告に利用することで会社の利益の大部分を稼いでいる。これがビジネスモデルであり、私たちもそれに同意をしてサービスを利用しているのである。
しかし、こうした企業がプライバシー情報をきちんと管理してくれないケースもある。データを所有している企業から情報が漏れるケースは起きている。
特に最近、世界中で20億以上のアカウントを抱えているFacebookは、次々と問題が表面化している。16年の米大統領選では、英国のデータ分析会社ケンブリッジ・アナリティカが8700万人分の個人データにアクセスしていたことが判明。18年にはハッカーが5000万人分のデータに不正アクセスしていたことが明らかになった。そして18年12月には、Facebookが、AppleやAmazonやMicrosoftなど150社以上の企業と、ユーザーの個人データを共有していたことも判明している。はっきり言って、どこまで情報が漏れているのかは想像がつかないというのが実態ではないか。
さらに言えば、Facebookユーザーの個人データにアクセスできた企業の関係者などが、ユーザーの個人情報を見ていた可能性も否定できないだろう。なぜなら、好奇心に流されてしまう人も少なくないからだ。過去には、米国でこんな話があった。
13年、元CIAのスノーデンが、NSA(米国家安全保障局)の機密情報を大量に暴露し、NSAが世界中でSNSやネットサービスを利用しているユーザーデータを大規模に監視していると明らかにした。その流れでスノーデンは、NSAの職員たちが個人的な好奇心から、誰かが送った「局部の写真」などのデータものぞき見していると述べていた。さらに米議会でも、情報機関の職員らが、興味本位で集めたプライバシーのデータをのぞき見ていたことが暴露されている。
関連記事
- スーツ姿のビジネスマンが「時代遅れ」になる日
米金融大手ゴールドマン・サックスが社内のドレスコードを緩めると発表した。米国企業では、職場の服装がカジュアル化しつつある。ビジネススーツが「過去の産物」となる日も遠くないかもしれない。 - あなたの個人情報、Facebookにこれほど吸い上げられている
Facebookの個人情報が不正に集められて米大統領選に使われたことが指摘され、騒動となっている。しかし、無料で利用できるFacebookやGoogleが個人情報を利用してビジネスをしていることは驚くことではない。どのようなデータが吸い上げられているかというと…… - 「米粒スパイチップ」だけじゃない 中国に“情報を盗まれる”恐怖
米大手企業に対する中国のハッキング疑惑が報じられ、話題になった。しかし、その手口はこれまでも世界中で行われてきたサイバー工作だ。中国があの手この手で実践してきた、ターゲットが気付かないうちに膨大な情報を盗み出す手法とは…… - ファーウェイのスマホは“危険”なのか 「5G」到来で増す中国の脅威
米国が中国・ファーウェイの通信機器を使わないように友好国に要請していると報じられた。なぜファーウェイを排除しようとするのか。本当に「危険」なのか。その背景には、次世代移動通信「5G」時代到来によって増大する、中国の脅威があった。 - 僕らのヒーローだったジャッキー・チェンが、世界で嫌われまくっている理由
香港アクション映画の象徴的存在、ジャッキー・チェンのイメージダウンが止まらない。隠し子である「娘」の振る舞いや、自伝で語られた「ダメ人間」ぶりなどが欧米やアジアで話題になっている。私たちのヒーローだったジャッキーに何が起きているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.