ボルボV60クロスカントリーとプロジェクトE.V.A.:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)
ボルボの出来が素晴らしい。黄金期と言っていい。だからちょっとしたお金持ちにクルマの購入相談をされたならボルボを勧める。ただし敢えて気になるところを挙げるとしたら、燃費だ。企業平均燃費規制(CAFE)のクリアには課題が残る。また安全に関するボルボの60年間に及ぶ論文などを公開するプロジェクトE.V.A.には、自動車産業がこれまで占有してきた技術を競合社に供与する新しい動きが始まっているのではないか?
ただし、筆者と同じく懐が年中涼しい人であれば、まあちょっとボルボには手が届かないので、国産車のどれかをお勧めするだろう。80年代のように欧州車と比べて安かろう悪かろうでは全然なく、ぐっとリーズナブルな価格でボルボと戦えるクルマは今国産車にも増えている。
ただし、国産車の現状の実力では、上に挙げたデザインとシートの出来に関しては、ボルボを超えるのはちょっと難しいだろう。発売待ちのMazda3はそこに切り込める初めての国産車になりそうに思える(3月11日のMazda3記事参照)。その他に、国産車を回避する理由があるとすれば、ステータスへのこだわりが強い人は外車でないとダメという場合もあるだろう。
話を本筋に戻すと、原則的に今ボルボは買いなのだ。とうっかりバイヤーズガイド的なことを書いてしまうと細かい事を説明しなければならなくなって若干原稿がモタモタしてしまうのだけれど、念のために書いておく。
60シリーズは、国内で乗るにはサイズ的にもベストで、すでに述べたように、V60は標準車もクロスカントリーも良いし、XC60も良い。60シリーズは特にコンパクト性を重視しない人には一番勧めやすい。
一方、コンパクトで価格的にも狙いやすい40シリーズは、ちょっと但し書きが必要だ。XC40はかなり良いクルマだと思うが、前席2名乗車で使うケースに限る。リヤシートは座るために適さない。あれは荷室を使いやすくするための折りたたみ性に重点を置いたシートで、補助席だと割り切れないなら価格差を飲み込んでもXC60を選んだ方がいい。
V40は永らくお薦めできる一台だったが、まもなく新世代に代わるし、XC40でデビューした新世代シャーシーから類推する限り、そこでの性能や商品性のジャンプアップはかなり大幅なので、今わざわざ選ぶことはない。特に前述の新世代シートの導入があるだろう点は大きい。よほど値引きが大きいのでなければ、新型の登場を待ちたい。
関連記事
- トヨタ ハイブリッド特許公開の真実
トヨタは、得意とするハイブリッド(HV)技術の特許(2万3740件)を無償で提供する。しかし、なぜ大事な特許を無償公開するのか? トヨタの狙いと、そしてどうしてトヨタが変わらなければいけなかったかと解説する。 - Mazda3に見るマツダの第7世代戦略
北海道上川郡剣淵町のテストコースで開催されたマツダの雪上試乗会にMazda3が用意された。筆者はすでに北米での試乗会で運転して、十分以上に驚いた後なのだが、さらにもう一度驚かされた。 - V60 ベストボルボの誕生
ボルボは商品ラインアップの中核を担う60シリーズをモデルチェンジして発表した。新型V60は、結論を言えば現時点でのベスト・ボルボだと思う。その理由を解説したい。 - ボルボXC60 社運を懸けた新世代アーキテクチャの完成
先代XC60はここ数年、販売台数で見てもボルボの30%を占めるベストセラーだ。そのフルモデルチェンジは、ボルボにとってまさに正念場である。 - XC40「ボルボよお前もか」と思った日
ボルボからコンパクトSUV、XC40が登場した。何と言っても注目すべきなのは、ボルボの歴史上初めて「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したクルマなのである。実際に乗ってみてその出来栄えを試したところ……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.