ボルボV60クロスカントリーとプロジェクトE.V.A.:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)
ボルボの出来が素晴らしい。黄金期と言っていい。だからちょっとしたお金持ちにクルマの購入相談をされたならボルボを勧める。ただし敢えて気になるところを挙げるとしたら、燃費だ。企業平均燃費規制(CAFE)のクリアには課題が残る。また安全に関するボルボの60年間に及ぶ論文などを公開するプロジェクトE.V.A.には、自動車産業がこれまで占有してきた技術を競合社に供与する新しい動きが始まっているのではないか?
課題はCAFE規制のクリア
ということで、今回のV60クロスカントリーの取材は「もう良いのは分かっているからさ」という気分で臨んだ。ところが……なんてことでもあれば勢い筆が進むのだが、予想通りの良さを確認してしまったので、もう何もエモーショナルなことがない。
試乗から帰って来て、ボルボのスタッフに「いかがでした?」と聞かれても「まあ良いのは分かってますからねぇ」という具合で甚だ盛り上がりに欠けてしまった。「何か気になることはないですか?」と言われて思い出したのは燃費だ。今回試乗したのはV60クロスカントリーT5 AWD。エンジンは2.0リッター直噴ターボで、254馬力350Nmである。そこそこ元気なモデルなのだが、これのJC08モード燃費が11.6キロ/リッターしかない。
筆者の中での最近の基準は、実用車の実用燃費の下限レベルが13キロ/リッター。エコを特徴とするクルマなら20キロ/リッターあたりにある。別に燃費でセコく節約しろということではなく、今後厳しさを増す企業平均燃費規制(CAFE)をクリアするにはそのくらいに達していないと無理だからだ。
CAFEの規制は19年で1キロメートル走行あたりCO2排出量130グラム。これは現在のパワートレイン「Drive-E」でクリアできるだろう。しかし20年の95グラム規制をクリアできるのは、恐らくプラグインハイブリッドモデルだけだと筆者は思う。しかもその数値は25年、30年と年を追う毎に厳しさを増していく。
欧州のメーカーはこれらの規制をマイルドハイブリッドでクリアできるという見通しを持ってきたが、どうもその見込みは思ったより厳しい様子になってきている。
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