何分後に雨が降る? 「ハイパー天気予報」が災害大国・日本を救うかもしれない:世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)
令和時代も自然災害への警戒が不可欠だ。そんな中、米企業のクライマセルが天気予報の概念を変える可能性があるテクノロジーを開発し、注目されている。従来よりも正確に予測できるという「ハイパー天気予報」とはどんなものなのか。
ハイパー天気予報がビジネスを変える
また、クライマセルによる「ハイパー天気予報」が実現することで私たちが受ける恩恵は、実のところ災害対策だけではない。ビジネスをも大きく変えると見られている。
世界で現存する産業のうち3分の1が、天候に左右される仕事だといわれている。また、天候の変動によって年間GDPに2兆ドル以上の影響を与えているという。
例えば、航空会社などは最も分かりやすい。正確な天気予報が出れば、運行状況への的確な決定ができるため、数百万ドルという損失を出さなくて済むと見られている。そのため、すでにいくつもの米航空会社がクライマセルのサービスを利用している。
航空会社以外では、建設会社や保険会社のほか、電力など公共サービスも同社のサービスを利用している。現時点で、北米や欧州、インドで導入が始まっているという。近い将来には、個人もアプリで利用できるようになり、そうなれば、今いる場所で「○時○分○秒」から雨が降り始める、といった予測も実現されるだろう。
たかが天気予報という人もいるかもしれないが、実際には命やビジネスに関わる重要な情報なのである。
特に災害の多い国である日本では、そうした情報を予測する能力が、国民の生命と財産を守るために不可欠だといえる。令和の時代に直面するであろう大地震への対策だけでなく、水害への警戒は必要となる。日本企業は、投資に乗り出したソフトバンクを見習って、こうした新興の「インフラ」テクノロジーに投資すべきではないだろうか。さもないと、いつまでたっても私たちは自然災害に負け続けるだけである。令和時代にはぜひとも災害対策でブレークスルーを見たいものだ。
今後のクライマセルの動向にも注目したい。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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