「日本発アメコミ」の挑戦 アジア系ヒーローは世界で勝負できるか:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
映画『アベンジャーズ』の大ヒットで、これまで以上にアメコミが注目されている。その独特のスタイルになじみがない人も多いかもしれないが、いま日本で新たな挑戦が動き出している。それが「日本発のアメコミ」だ。
“日本から発信する”アメコミとは?
18年10月31日、同社は公式サイトで「グラフィックノベル『戦隊』、リリース開始」と発表した。その『戦隊』とは、「STUDIO4℃」がグラフィックスを制作するオリジナルのグラフィックノベルであり、電子コミックサイトなどで配信が開始されている。
国際情勢を専門とする筆者は海外出張などが多いために、電子書籍については、サービスが普及し始めた頃からのヘビーユーザーである。タブレットさえあれば、いくらでも本を持ち歩けるからだ。そして書籍だけではなく、漫画なども電子書籍でかなり読むようになった。以前なら漫画は勧められれば読む程度で熱中するほどではなかったが、日本の漫画は近年世界的にも高く評価されていることから、最近になって勉強のためと読みあさるようになった。
そんな中で、知人から薦められた漫画が、この『戦隊』だった。この話は、ヒーローものなどに登場するようないわゆる「戦隊」が、現実の世界で実際に存在したらどうなるか、という内容だ。もちろん、暴力を振りかざす単なる違法な武装集団にすぎない。
原作者である中村神鹿氏に話を聞いてみると、「日本にも特撮や漫画のヒーローは存在しますが、超人的な能力で活躍するものが多い。そこで、変身することができない生身の人間がヒーローを演じるという不可能性を描いた悲劇にしたかった」と言う。見たところ、グラフィックや空気感は完全にアメコミのそれである。だがダークな世界観で、空気は重い。
そして、このグラフィックノベルを「STUDIO4℃」が全ページフルカラーでグラフィック化し、世界で勝負すべく動き出しているという。
ただ、その道のりは始まったばかりだと、中村氏は言う。実は中村神鹿という名前はペンネームであり、その正体はテレビドラマや映画で活躍していた脚本家だという。日本の漫画やドラマ、映画などの影響を大いに受けて吸収し、その脚本から学んだ日本流のコンテンツ構築力を背景に、中村氏は「日本人として、そのDNAをアメコミの本場である米国や世界で勝負するために注ぎ込みたい」と述べている。
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