セブンティーンアイスが大躍進 34年で激変した自販機の“設置戦略”:知られざる進化の歴史(5/6 ページ)
自動販売機で売られているセブンティーンアイス。自販機の設置台数が過去最高を更新している。成長を可能にしたのは時代の変化にあわせた“設置戦略”だ。
設置戦略と商品戦略がリンク
自販機の設置台数が増えていった要因を分析するうえで、見逃せないのがターゲットごとに開発された商品の数々だ。
発売当初、17アイスはシャーベット系がメインだったが、99年からはコーン形態が登場した。バニラやチョコといった味が濃厚なアイスだけを食べ続けるとそのうちに飽きてしまう。そこで、コーンと組み合わせることで、味や歯ごたえにアクセントを出し、最後まで楽しめるように工夫した。コーンを使った高価格帯の「クッキー&クリーム」や「ワッフルコーンショコラ」は、大人向けカテゴリーとして育っている。特に、クッキー&クリームは成人男性のリピート率が非常に高い。仕事の疲れをいやすための“プチ贅沢(ぜいたく)”消費も追い風になっている。
学生向けには「ティラミス」や「キャラメルリボン」など、スイーツ感や食感の変化がある商品をそろえている。特に「抹茶」は学生のファンが多いという。
「ソーダフロート」や「グレープシャーベット」は子ども向けの商品だが、高価格帯の「濃厚いちご」もヘビーユーザーが多いという。担当者は「最近のお子さまは舌が肥えているので、味の違いに敏感なようです」と解説する。
17アイスは、コンビニや量販店で販売されているアイスと違い、お客が食べる具体的なシーンを想像しやすいという特徴がある。例えば、温浴施設でよく消費されるアイスを改良しようとした場合、開発者たちは実際にスーパー銭湯でお湯に漬かった後、自販機でアイスを購入して味を確かめる。「風呂上りにおいしくするにはどうしたらいいのか?」という点から出発して、より支持される味に切り替えていくためだ。
このように、設置場所や季節によって変化するニーズにあわせた商品を投入できる体制が17アイスの強さを支えている。マーケティング戦略を洗練させていけば、設置台数をさらに増やしていけるかもしれない。
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