ホンダの決算 バリエーション7割削減の意味:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)
増収減益ながら、欧州の工場閉鎖など減益は一過性となるホンダの決算。そして来期に向けては、無駄な派生車種を3分の1に削減し、基礎設計を共通化する「ホンダアーキテクチャー」の導入も進める。
設計リソース配分の見直し
さて、再び八郷社長の発言である。
量産車の開発効率や部品共有を高める全社的な取り組み「ホンダ アーキテクチャー」を、既に開発に導入しています。この新しい手法で開発を進めた最初のモデルが、来年投入するグローバルモデルになります。そして今後、適用モデルを順次拡大していきます。
こうした地域の協調と連携によるグローバルモデルと地域専用モデルの強化、そしてホンダ アーキテクチャー導入により、25年までに量産車の開発工数を30%削減し、その工数を将来に向けた先進領域での研究・開発に充てることで、ホンダの将来を支える新技術を生み出していきます。
これも少々分かりにくい。大きく分けると2つの話がある。1つ目は部品の共有だ。例えば部品を留めるボルト。こういうものは各領域のエンジニアが仕様を決めてきた。概ね長さと太さということになるのだが、例えば長さが1ミリ違うボルトが本当に必要かといえば、これはたいてい大が小を兼ねる。仮にホンダ内部でボルトの基本サイズを汎用で定めてあれば、エンジニアはそれを選択すれば済んでしまう。
設計の手間は省けるし、サプライヤーにとっても、ほんのわずかしか違わないサイズを生産在庫する手間が省ける。製品単位で見れば発注数が増えることで単価の引き下げ圧力が強まるかもしれないが、サプライヤーもそれに合わせた合理化が可能になるはずだ。
もう一点は、いわゆるモデルベースドデベロップメント(MBD)領域の話だ。クルマのシャシーは最終的には車種ごとに異なるが、それを部分で見ていった時に、必ずしも仕様として要求されることが異なるわけではない。
例えば、エンジンルーム、コクピット、リヤ周りなどの構造体をそれぞれに見れば、求められる衝突安全性や確保すべき剛性などの設計の大筋は変わらない。「このクルマは安全性が低くても構わない」などということが起きないのは当然だ。
となれば、基礎設計をモデル化することは可能なはずだ。それらを毎度ゼロベースで作るよりも、社内でモデル化して、例えば車幅や全長、車高などの可変代を織り込んで設計することはできるはず。というより他社ではもうそれが当たり前になっている。マツダのSKYACTIVシャシーやトヨタのTNGAの狙いのひとつはそれだ。
それによってリソースに余裕ができれば、先進領域の研究・開発のみならず、デザインや内装素材などの開発にリソースを割り振ることができ、商品力の向上が期待できる。
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