ホンダの決算 バリエーション7割削減の意味:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)
増収減益ながら、欧州の工場閉鎖など減益は一過性となるホンダの決算。そして来期に向けては、無駄な派生車種を3分の1に削減し、基礎設計を共通化する「ホンダアーキテクチャー」の導入も進める。
メインとなるのはハイブリッド
もう一つ八郷社長は重要な発言を行った。
ホンダは、カーボンフリー社会の実現に向けて、30年にグローバル四輪車販売台数の3分の2を電動車にする目標を掲げています。
電動車の導入は、「燃費の向上」と「ゼロエミッション」という2つの観点があります。企業平均燃費(CAFE)への対応は、世界各地域で規制が強化されている現在、自動車業界の最重要課題の一つです。ホンダは、インフラや車の使われ方を考えると、CAFE対応に現時点で最も有効な技術はハイブリッドだと考えています。全世界での拡販を通じて燃費の向上による地球環境への貢献を目指し、電動化はハイブリッドを中心に進めていきます。
そのために2モーターハイブリッドシステムの「i-MMD」をホンダのモデルラインアップ全体に広げていきます。現在、中・大型モデルに対応しているi-MMDに、新たに小型車向けのシステムを開発しました。この小型i-MMDは、今秋の東京モーターショーで世界初公開予定の新型フィットから採用します。
現在の排ガス規制には、生産台数に対して一定比率で排ガスゼロのモデルを義務付ける米国のZEV規制と中国のNEV規制がある。これらは現実的には電気自動車(EV)でなければクリアできない。だからラインアップにEVを持つことは大事だ。
しかし、もっと大変なのは企業の全販売モデルについて1キロメートル走行あたり平均CO2排出量の目標を設定するCAFE規制である。19年規制は130グラム。20年規制は95グラムとなっているが、現在のガソリンエンジンではこの20年規制がクリアできない。
差し迫る20年までにEVを大量に販売するのはどう考えても無理なので、出せばある程度数がはけるハイブリッドでなんとかするしかない。そしてそれはおそらく25年規制までは揺らがない。
さて、ホンダの事業計画は聞いていて不自然な部分は感じない。得心がいくものだと思う。ただし、本当にそれが予定通りに進むかどうかはまだなんともいえない。
関連記事
- 英国工場閉鎖を決めたホンダの狙い
2月19日、ホンダは記者会見を開き、事業運営体制に関する2つの発表、「二輪事業の組み替え」と「英国とトルコの四輪生産工場を閉鎖」を行った。この狙いとは? - 見えてきたホンダのMaaS戦略
ソフトバンクとトヨタ自動車が共同出資して立ち上げたMaaS企業「MONET」に、ホンダが資本業務提携する。同時に、MONETは88社が参加するコンソーシムも立ち上げた。なぜオールジャパンのコンソーシムが必要なのか。またホンダの狙いはどこにあるのだろうか。 - 完敗としか言いようがない日産の決算
ズタズタの決算内容だった日産。一つの要因は、北米で販売促進費用(インセンティブ)をつぎ込んで売り上げを伸ばそうとしたことにあるのではないか。対策として、22年にはモデルラインアップの半数を電動化車両にするというがバッテリー供給は大丈夫か。20車種の新型を出すというのも、短期間で作られる新車は大丈夫なのか? - マツダの決算 またもや下がった利益率の理由
売上高は増収だったが利益面の落ち込みが激しいマツダの決算。北米と中国市場の不振が響いた結果だ。今後に向けて、販売店改革とパワートレーンの刷新を進めるが、これが北米市場で実を結ぶかどうかが焦点となる。 - 71億円の減益ながら表情の明るいホンダ
大型連休前にホンダの決算発表会が開催された。営業利益は8335億円で、前年度に比べて71億円のダウンとなった。しかし会見に臨んだ倉石副社長の表情は明るい。質疑応答では笑顔を見せる局面もあった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.