中国が突き進む「一帯一路」と、ユーラシア鉄道網の思惑:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)
中国が進める広域経済圏構想「一帯一路」。ユーラシア大陸全体に及ぶ構想において「鉄道」は重要なインフラだ。この鉄道網の整備の行方は、日本の政府や企業にとっても大きな影響を及ぼす。
「一帯」と「一路」は別の地域
中国高速鉄道の建設、開業は既定方針を粛々と進めているだけで、もはや珍しいニュースではなくなった。次に浮上するキーワードが「一帯一路」だ。簡単に言えば、中国の経済圏を中央アジア、中東、欧州へと拡大する国家戦略だ。それは国際的な経済連携であるけれども、中華思想から続く経済支配だと警戒する見方もある。政治外交的な話はともかく、鉄道という視点で捉えれば、これは国際輸送ルートの再構築だ。
「一帯一路」は、日本人の四字熟語の感覚だと「大きな地域を1本の道に集約する」と読める。しかし「一帯」と「一路」は別の意味だ。「一帯」とはシルクロードを基幹とした陸上の経済圏、「一路」は海路の経済圏で、ユーラシア大陸南側沿岸諸国と欧州を結ぶ。13年に習近平国家主席が構想を発表し、14年にアジア太平洋経済協力会議(APEC)で国外にアピールした。沿線国の経済協力関係を結び、交易の拡大や経済の活性化を図る。
その重要なインフラとして「一帯」では鉄道、「一路」では港湾の整備がある。沿線国の相互発展という名目はあるけれども、インフラにおいては欧州と中国を結ぶルートの整備である。中継ルート上は経済的に未発達な国も多く、一帯一路構想に参加することで恩恵を得られるメリットがある。しかし、物流ルートを支えるインフラを整備する資金がない。そこで登場する金融機関が「AIIB」、中国が主導するアジアインフラ投資銀行だ。
中国はAIIBを通じて一帯一路参加国に開発資金を貸し付ける。その金で中国の企業がインフラを整備し、参加国が返済する。一帯一路で中国が実施する貸し付けとインフラ整備は、沿線国の利益だけではなく、中国と欧州の輸送ルート整備という名目がある。
この仕組みは、日本が政府開発援助(ODA)で実施している円借款に似ている。かつては低利で長期間の資金貸し出しを実施し、その条件としてインフラ整備案件では日本企業を参加させた。それが途上国のためではなく日本企業の利益優先ではないかと批判された。ただし、整備されるインフラは途上国に供するものであった。
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