景気は結局回復した? 悪化? 「GDPの解釈」に潜むワナ、超簡単に解説:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
2019年1〜3月期のGDPが予想外の結果に、マイナス成長かと思われたが一見、正反対の内容となった。果たして「良かった」と言えるのか、徹底解説する。
1〜3月期のGDP(国内総生産)が予想外の結果だったことから、政界ではちょっとした混乱が生じている。マイナス成長だった場合、これを材料に安倍政権が消費増税の延期を打ち出すとのシナリオも取り沙汰されていたが、結果は正反対であった。
もっとも、GDPの中身をよく検証すると決して良い数字とはいえず、解散総選挙を強く願う一部の論者は「今回のGDPの結果はとてつもなく悪い」と強調している。
数字というのは、その切り取り方でいかようにも解釈もできるので、取り扱いには注意が必要である。果たして今回のGDPは良い結果だったのだろうか、悪い結果だったのだろうか、客観的に分析する。
なぜ輸入が減るとGDPが増えるのか
内閣府が2019年5月20日に発表したGDP速報値は、物価の影響を除いた実質でプラス0.5%だった。年率換算するとプラス2.1%になるので、ここ最近としてはかなり良い数字といってよい。だが多くの識者が指摘しているように、数字の中身を詳細に検証するとあまり良い状況ではなく、これまでと同様、景気が回復しているとは言えないというのが現実である。
今回、GDPの数字が大きく上昇したのは、輸入が減ったことが最大の要因だが、この話にピンとこなかった人も多いだろう。輸入が減るとなぜGDPが増えるのかについて理解するためには、GDPの定義について知る必要がある。
GDPは通常、「1年間に国内で生産された財とサービスの付加価値を合計したもの」と説明される。だが、この定義はGDPの生産面に着目したものである。GDPには三面等価の原則があり、生産面に加え、支出面、分配面という3つの側面がある。私たちが通常、ニュースなどで目にするGDPは生産面ではなく支出面の数字が使われており、これは誰がいくらのお金を払ったのか示したものだ。
支出面のGDP項目を大まかに分類すると、「個人消費」「企業の設備投資」「政府支出」「輸出」の4つになる。
輸出というのは、需要が海外にあるということを示しており、お金を使った人は海外にいるので、国内とは別項目になっている。だが企業は輸出だけでなく輸入も行っているので、外国にお金を払う分もある。
従って、GDPにおける輸出というのは正確には「純輸出」とされており、輸出から輸入を差し引いた金額が適用される。輸出から輸入を引いたものが純輸出なので、輸出が変わらない状況で、輸入が減れば純輸出はプラスになり、GDPもプラスとなる。1〜3月期においては輸入が大きく減ったので、GDPは大幅プラスとなった。
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