景気は結局回復した? 悪化? 「GDPの解釈」に潜むワナ、超簡単に解説:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
2019年1〜3月期のGDPが予想外の結果に、マイナス成長かと思われたが一見、正反対の内容となった。果たして「良かった」と言えるのか、徹底解説する。
輸入減の背景に米中貿易戦争
ではなぜ輸入が大きく減ったのだろうか。企業がモノを輸入する目的は大きく分けて2つある。1つは、原材料や部品などを調達し、国内の工場で加工して最終製品を輸出するためである。もう1つは、輸入した製品を国内の消費者に販売するためである。
今回、輸入が大きく減った理由は、前者が大きいと考えられる。
18年後半から米国と中国は貿易戦争状態となっており、中国から米国への輸出が大幅に減少している。中国企業は日本から製造装置や部品をたくさん購入しているので、中国の対米輸出が減ると日本の対中輸出も減少する可能性が高い。多くの日本企業は中国経済が低迷していることから、今後、中国向けの販売が大きく減ると考えられる。もし今までと同じペースで原材料を買い続けると、在庫として余らせてしまう可能性があるので、輸入を絞った可能性が高い。
つまり今回のGDPの上振れは、生産計画の見直しによる輸出鈍化(もしくは減少)の前触れといってよい。多くの識者が内容が悪いといっているのは、こうした理由からだ。
肝心の個人消費は依然低迷
国内の一部の識者からは、今回のGDPが悪い数字なので、リーマンショック級の事態だと指摘があるが、言い過ぎだろう。その理由は、景気動向の決定に極めて大きな影響を与える個人消費については、ここ数年、ずっと低迷が続いており、今に始まったことではないからである。
リーマンショック後の日本は、将来の先行き不安から消費者が積極的にお金を使わず、個人消費が伸び悩んでいた。それでもGDPが何とかプラス成長だったのは、米国と中国の好景気に支えられ、日本の輸出が拡大していたからある。
これまでの景気は、弱い個人消費を輸出が支えるというものであり、その図式は今も変わっていない。日本経済にとって頼みの綱だった米国と中国の景気が怪しくなっているので、企業は危機感を強めている。
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