非正規社員もボーナスがもらえる? 賞与と各種手当を取り戻す「正当な手順」:ブラック企業から自分を守れ!(3/4 ページ)
6月に入り夏のボーナスシーズンが到来。非正規社員にとってボーナスは縁遠い存在だったが、その常識を覆す判決が大阪高裁で下された。賞与や各種手当を取り戻す正当な方法と手順とは?
続出する「支払え判決」
実際に来年の法律の施行を控えて戦々恐々としている企業は多い。なぜなら賞与に限らず、住宅手当、扶養手当、皆勤手当などの諸手当を正社員だけに支給している企業は、なぜ非正規社員に支給しないのか、その合理的理由を説明できない企業が多く、単純に「あの人は正社員だから」という理由だけでは違法と判断されるからだ。
実は今回の法律には「当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない」という文言が入っている。つまり、手当であれば、手当一つひとつについてその性質・目的に照らして合理的かどうかを判断することになる。
例えば、正社員に皆勤手当が支給されているのに非正規には支給されないのはおかしいと裁判に訴えた場合、これまで裁判所は正規と非正規の賃金制度全体を比較し、正社員は将来転勤する可能性があるとか、会社の幹部候補生であるとかといった大ざっぱな理由で皆勤手当を支給しないのは不合理ではないという判断を下してきた。
だが、これからは手当そのものについて非正規社員に支給しないことが合理的かどうかで判断される。
実は冒頭のボーナス支給の判決と同じように、法律の施行を前に手当を支払うべきという判決が相次いでいるのだ。例えば、昨年4月24日の松山地裁の判決では同じ製造ラインで働く正社員に家族手手当を払っているのに、非正規社員に支給しないのは不合理だとして支払いを命じた。同じように住宅手当や精勤手当も支払うように命じている(井関松山製造所事件)。
また、契約社員に扶養手当、住居手当、年末年始勤務手当を払わないのは違法と訴えた日本郵便訴訟の大阪高裁の判決(19年1月24日)は、一審に続いて手当の不支給は違法との判決を下している。
さらに今年2月20日の東京高裁判決では、駅の売店で働く非正規社員に住宅手当だけではなく、退職金も支払うように命じている(メトロコマース事件)。
これまでの判決では正社員と非正規社員の基本給の違いを不合理だと認めた判決はないが、賞与や諸手当を勝ち取った判決が相次いでいる。
関連記事
- 悪質手口から有休を守れ! あなたにもできる「ブラック企業との戦い方」
働き方改革関連法で注目されるのが年5日の「有給休暇の取得義務」――。取得させないように動く経営者からいかにして自分を守るのか? - 未払い残業代を取り戻せ! あなたにもできる「ブラック企業との戦い方」
働き方改革関連法の施行は、これまでただ働きしてきたサービス残業による未払い残業代を取り戻すチャンスだ。 - 詐術、脅迫、暴力、洗脳 「辞めたくても辞めさせないブラック企業」急増の真相
「会社を辞めたいのに辞めさせてくれない」という人の相談が増えている。厚生労働省の調査では、会社に辞めたいと伝えても辞めさせてくれない「自己都合退職」の相談が2番目に多く、3万8945件(相談件数の12.8%)もあった。「退職トラブル」の実態とブラック企業への対策を探る。 - ブラック企業だけじゃない 「ワンオペ管理職激増」の深層
長時間労働、ワンオペ地獄、給料が上がらない、人材に投資しない……。「働き方の不条理」はなぜ生まれるのだろうか? - 激増する“ワンオペ管理職” 「かりそめの働き方改革」が日本をダメにする
日本では1人仕事をする「ワンオペ管理職」が激増している――。ワンオペが増えること、ノウハウは受け継がれることなく消滅し、結果的に組織として生産性は下がってしまう。 - 「おまえの家族皆殺し」――“極限のパワハラ・セクハラ”にどう立ち向かうか
日本で初めてパワハラやセクハラ規制の強化策を盛り込んだ法律が、通常国会で成立する見通しとなった。法律などを使っていかにして自分の身を守るのか? ベテランジャーナリストが解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.