製薬世界トップ3の日本社長が育休を!? 「ノバルティスファーマ社長」の子育て術:大企業にもイクメンの波(3/3 ページ)
仕事をしながらの子育てで大事なことは――ノバルティスファーマ社長の綱場一成氏の子育て術とは?
―― これから先の学校教育については、夫婦で話をしていますか。
綱場氏 めちゃくちゃ話しています。私も妻も外資系企業に長く勤めているため、世界のビジネス環境の変化は、それなりに理解しているつもりです。
その中で一つ言えるのは、やはり語学力は必須だということ。子どもには将来、海外で活躍してほしいと思っています。日本の国内市場が今後、縮小するのは確実です。つまり、子どもたちの世代が勝負するステージは世界になる。
その時、使える言語が一つ増えるだけで、入る情報量は何十倍、何百倍にもなります。
子どもたちも日本語と英語は普通に話せるようにして、できれば第3カ国語も話せるようになってもらいたい。私は大学院時代に北京に留学して中国語を学びましたが、のちに香港で仕事をする際に役立ちました。
実際に、どういう学校に行かせるかという具体的なプランはこれからですが、幅広い選択肢から考えたいですね。現状の日本の教育システムは、どうしても能力全体を平均値まで底上げする、詰め込み式の勉強が中心のように思えます。もっと、社会に出てすぐに使える知識やディベートの能力を磨く機会を与えられる場になればいいと思います。
もちろん、最終的に進む道を選ぶのは子ども自身です。ただ自我が芽生えていない時期にどういう環境を与えるかは親の責任なので、まさに今、乳幼児期の経験にはこだわりたいと思っています。
運動や言語の能力は臨界期が比較的小さい頃に来ると聞きますので、長男はインターナショナルのモンテッソーリ教育の保育園に通わせていて、平日の日中は英語ばかりの生活を送っています。私たちの前では日本語で話すので、どこまで保育園で英語を話しているのか分かりませんが、テレビで英語版の「ミッキーマウス」を見る時は、たまに「Oh myGod!」なんて言っています(笑)。
―― 将来、どういう分野に進んでほしいという希望はありますか。
綱場氏 あまり縛りたくないですね。子どもは生まれた瞬間から好奇心の固まりで、周りの大人が「これはダメ」「これはここまで」と制限することで、だんだんやる気が削がれて、道が絞られていく。
先ほど述べたように、ある程度の年齢までは親が環境を準備するべきですが、あとは本人の好きなように解放する方が個性も能力も伸びていくはずです。
製薬業界で最近注目を集める話題の一つが、「遺伝子解析」です。「ヒトの全ゲノムが解析された」と世界の話題になったのが2000年代初頭でしたが、当時はヒト一人のゲノム解読に3000億円かかりました。それが今では10万円以下だそうです。また、DNA分析装置も20万円ほどで買えるとか。ガレージで遺伝子解析ができる時代なのだと考えた時、ふと「これは30年前のマイクロソフトやアップルと同じでは」と思いました。
つまり、私たちが想像しない分野が爆発的に伸びることが、十分に起こり得る。「DIYバイオ」(日曜大工感覚で行うゲノム実験)などの情報はYouTubeなどの動画サイトにあふれています。「今はITの時代だからプログラミング教育を」と、近い将来を見据えて学ばせることも重要ですが、子どもの興味の赴くままに、いろいろなことをインターネットでとことん探求させるのもいい。大切なのは、子どもがその分野で趣味の領域を超えて、専門家になれることだと思います。
【後編に続く】
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