保管量は年30%増 寺田倉庫の「箱で預かる」サービスにモノが集まる理由:“強み”をどう生かすか(3/4 ページ)
寺田倉庫の個人向け倉庫サービス「minikura」が成長を続けている。個人の持ち物を1点ずつ管理するサービスはなぜ誕生し、今後どのように人々の生活に寄り添っていくのか。時代の変化に対応するための“強み”を生かす考え方について聞いた。
最終的に利用料金を月100円にはできなかったが、最低価格を200円まで抑えることができた。箱の大きさや倉庫内での作業フローなど、「1年から1年半かけて、現場でトライ&エラーを繰り返し、最善のオペレーションとコストを探った」(月森氏)
特に、箱の中身の管理は徹底している。1点ずつの荷物に個別IDを登録。写真を撮影し、マイページで確認できるようにした。IDには、どの倉庫の何番目の棚の何段目の箱に入っているか、という情報が登録されている。倉庫内では温度と湿度を一定に保ち、カビの発生などのトラブルが起きにくい環境を整えている。これまでに「大きな問題は発生していない」(月森氏)という。
「機能を使わせて」の要望でAPI連携拡大
月森氏はminikuraを「恐る恐るリリースした」と振り返る。「倉庫業の会社なので、シャイな気質がある。発信することに慣れていなかった」。しかし、リリースから1週間後にメディアで紹介され、それまでになかったサービスとして話題になった。その後もメディアで取り上げられる機会が増え、認知度は上昇していった。13年には、オークションサイト「ヤフオク!」と連携し、預けたアイテムを出品できるサービスを開始。利用者の増加を後押しした。
ヤフオクに代表されるように、minikuraの事業拡大を支えたのが、外部の企業やサービスとの連携だ。認知度が上がるにつれて、minikuraを知ったさまざまな業種の企業から「機能を使わせてほしい」と声を掛けられるようになった。そこで、minikuraのシステムと外部サービスとの連携を可能にするAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を構築した。
APIを活用したサービスの例としては、バンダイと組んで開発した、フィギュアの保管サービスがある。この連携によって、自社だけではアプローチできないターゲットの需要を掘り起こすことができたという。
また、ファッションレンタルサービス「airCloset」を運営するエアークローゼットなど、新しいサービスを発信しようとするスタートアップ企業とも提携。7社に出資した。システムに加え、物流や倉庫の確保に困っている企業にリソースを提供。「大手との提携には時間がかかるが、スタートアップはスピード感がある」(月森氏)。新しいサービスの立ち上げを支える機能も担った。
さまざまな連携を試した中で、うまくいかなかった取り組みもある。13年には、アニメグッズを取り扱うアニメイトと、コミックやCD、DVDなどの保管サービスを開始したが、すでに終了している。その理由について、月森氏は「アニメグッズの利用者は想定よりも若年層が多く、保管にお金をかける人が増えなかった」と話す。
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