冷蔵庫の中まで“のぞき見”しようとするクックパッドの新戦略:単なる“データ提供”からは卒業(1/4 ページ)
日本最大級の料理レシピサービス「クックパッド」。膨大な検索結果という“ビッグデータ”を法人向けに提供しているが、ユーザーの冷蔵庫の中まで分析するような新サービスを考えているという。
令和時代に稼ぐ企業はここが違う:
「売り上げが急速に増えている」「同業他社と比べ利益率が高い」「新事業が好調」――平成から令和に突入する中で、時代の変化に対応できそうな企業の強さの秘密を決算書の数字やビジネスモデルを踏まえながら迫る。
日本最大級の料理レシピサービス「クックパッド」。2019年1〜3月における国内の平均月間利用者数は5564万人だ(ブラウザベースまたは端末ベースにより集計した訪問者の月間平均)。投稿レシピ数は310万品となっており、ユーザーの多くが20〜40代の女性だ。
検索結果などのデータを、食品メーカーや小売り企業に提供していることは広く知られるようになってきた。クックパッド上で検索された単語を分析し、商品開発や店頭での品ぞろえに反映させるといったイメージだ。
このようなデータ分析・提供サービスは約10年前から行われているが、最近、新しい事業領域に進出しようとしているという。自社に蓄積した膨大なデータをどのようにして生かそうとしているのだろうか。マーケティングサポート事業部の村上雅洋副部長に話を聞いた。
サービスの中核となる「たべみる」
法人向け分析サービスの中核となっているのが「たべみる」だ。クックパッドのユーザーは料理名だけでなく、食材や目的(時短料理など)を日々検索している。こういった膨大なビッグデータを集計して、提供している。
サービス内容は「キーワード分析」「組み合わせ分析」など多岐にわたる。プランは「ベーシック」(月額15万円、税別、以下同)、「リアルタイム」(25万円)、「スタンダード」(35万円)の3つだ。それぞれのプランごとに、サービスを利用できるアカウント数や、検索できる期間が異なる。村上副部長によると、顧客は約100社で、利用人数は3000〜4000人程度だという。
たべみるを利用している企業は、食品メーカー、消費財メーカー、白物家電を手掛ける電機メーカー、小売りチェーン、卸会社などだ。消費剤メーカーの場合、食のトレンドをチェックすることで、キッチン周りの洗剤を開発・宣伝するヒントを探ろうとしている。
最も選ばれているプランはスタンダードで、全契約の9割近くを占める。他のプランではデータを検索できる期間が4〜5年前までといった制限があるが、スタンダードだけは09年以降のデータを全てチェックできる。食のトレンドを長期にわたって分析できる点が支持されているようだ。ある大手食品メーカーの場合、1社で数百個のアカウントを取得しているという。利用している社員が所属している部署は宣伝部や事業部(マーケティング担当者)などだ。最近では、商品開発部の社員が開発のヒントを求めてサービスを利用するようになってきている。
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