冷蔵庫の中まで“のぞき見”しようとするクックパッドの新戦略:単なる“データ提供”からは卒業(4/4 ページ)
日本最大級の料理レシピサービス「クックパッド」。膨大な検索結果という“ビッグデータ”を法人向けに提供しているが、ユーザーの冷蔵庫の中まで分析するような新サービスを考えているという。
大手小売りチェーンと組んで「冷蔵庫の中」を推測する
今後、クックパッドはどのような事業展開を目指しているのだろうか。村上副部長は「大手小売りチェーンからPOSデータを直接提供してもらうプロジェクトを計画しています」と説明する。あるユーザーが「どんな具材を買って、どんなレシピを検索しているのか」ということは分かってきた。そこに、スーパーのPOSデータを加えることで、より幅広い購買行動を把握しようという狙いだ。
あるスーパーでいつも買い物をする主婦がいたとする。一般的に、しょうゆは3カ月で使い切るとされている。POSデータからしょうゆを買った日を把握できれば、新しく購入するタイミングで広告を出せる。そんなイメージだという。分析の精度が向上すれば、冷蔵庫の中にあるしょうゆやドレッシングを使い切るタイミングをかなり正確に把握できるようになりそうだ。
この仕組みは、小売り側にとってもメリットがある。小売りチェーンは、自社独自のアプリを運営していることが多い。アプリ上でクーポンを発行したり、セールの情報を配信したりしている。しかし、村上副部長によると多くのユーザーがアプリを利用しているにもかかわらず、広告などによるマネタイズが必ずしもうまくできているわけではないという。
クックパッドは普段から食品メーカーと一緒にユーザー像の把握や販促の立案に取り組んでいるので、メーカーサイドがどのような広告出稿ニーズを持っているか把握している。そこで、クックパッドがメーカーと小売りの中間に立って、適切な広告出稿を手伝うというわけだ。「御社のこの商品を売りたいのなら、●●スーパーではなく、××スーパーのアプリに広告を出したほうが効果的ですよ」と提案するといったことが想定される。
このようにクックパッドは自社でため込んだデータを提供するだけでなく、外部のデータと融合させ、新しいビジネスを生み出そうとしている。ビッグデータの活用という観点で考えると、令和時代の新しいビジネス像なのかもしれない。
関連記事
- 家賃が200万円もするのにスタバがもうかる理由
スタバは大都市の一等地に多くの店舗を構えている。1杯数百円のコーヒーを販売しており、店に長居するお客も多い。家賃が200万円以上するような場所でも利益が出せる秘密とは? - 低迷していた「カルピス」が、右肩上がりの再成長を遂げた理由
2019年に100周年を迎える「カルピス」がいま、再び成長している。販売量は横ばいで推移していたのに、10年ほど前から右肩上がりに伸びているのだ。変わらない味のロングセラーブランドが再成長できたのはなぜだろうか。 - 家電以外の商品を売り始めた家電量販店を悩ます「リベートの減少」
家電量販店は少子化や家電市場の飽和を踏まえ、家電以外の商品の取り扱いを増やそうとしている。しかし、家電の販売額を減らすことは、リベートという収入の減少にもつながる。そもそもリベートとは何か? そしてなぜリベートという慣行が続いているのかを考察してみよう。 - 「価格破壊者」だった大塚家具がニトリに敗れた理由
創業当初の大塚家具が業界の「価格破壊者」だったことをご存じだろうか。その姿はかつてのニトリと重なる。同じようなビジネスモデルから出発したのにどうして両社の業績には差が出たのだろうか。 - どん底から復活したメガネスーパーは、なぜ「安売り」と決別できたのか
わずか数年前、倒産寸前まで追い詰められていたメガネスーパーの「V字回復」が注目を浴びている。どのようにどん底からはい上がったのか。失敗と復活の背景には、眼鏡業界のビジネスモデルの変化を踏まえた戦略の転換があった。詳しく解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.