2015年7月27日以前の記事
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スバルが生まれ変わるために  その2池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

北米での取材の途中、いくら議論しても結論は出なかった。そこで帰国後、スバル本社でもう一度取材を行う。しかし、本社に出向いても、結局のところスバル側に投げてあった「戦略があるかないか、あるなら具体的な戦略を教えて欲しい」という質問には明確な回答はなかった。スバルは変わらなくてはならないことをすでに十分分かっているはずだ。しかしながらその変革を実現していく組織改造が、まだ始まっていないのだと思う。

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 さて、前編では、筆者がスバルの北米有力ディーラーへ行って、北米ビジネスの成功要因を探ろうとして、結局その理由らしきものをほぼ見つけられなかったことと、やっと見つけた戦略らしきものが、くだらない理由でオフレコ扱いになりそうな話を書いた。今回はそこから先の話である。


これまでスバルのラインアップでは子育て世代に訴求する多人数モデルが不足していた。そこを補うニューモデルとして投入されたのが北米向け3列シートモデルのアセントだ

なぜ戦略を語れないのか?

 結局北米での取材の途中、いくら議論しても結論は出なかった。そこで帰国後、スバル本社でもう一度説明をしてもらうことにした。北米でうまくいっているブランド価値訴求販売が、たまたまの偶然なのか、それとも綿密な計画に基づいた企業戦略なのかについてはっきり説明してもらいたい。筆者の意図はそこにある。

 ただし、この時点で半ば見当はついていた。ブランド価値訴求販売が大事であることは、スバルは確かに認識している。「LOVEキャンペーン」は、その形がかなり変化球で現れたひとつである。しかし、あえていわせてもらえば、今それがうまく回っているのは、たまたま巡り合わせがスバルに圧倒的に利する方向へ向いただけで、おそらく全社を串刺しにする大きな戦略はないのだ。

 もちろん戦術レベル、つまりセクションごとにはいろいろな努力をしている。米国北部の積雪地帯でのAWDの踏破力と故障しない信頼性。米国のピックアップトラックに比べればはるかにコンパクトで知的なパッケージ。加えて、北米で積み上げて来た安全性と耐久性の口コミ的評判。そこに世の中をより良くしたいという「LOVEキャンペーン」が強い援護射撃になり、アウトドア指向のユーザーが好むフレッシュなブランドという認知が広がった。加えてコンシュマーリポートでの1位獲得が重なり、まさに今、北米でのスバルブランドは盆と正月が一度に来たような状況にある。

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