勤続30年の元みずほ行員が斬る! もう一つの「年金2000万円問題」:小売・流通アナリストの視点(2/5 ページ)
「年金2000万円不足騒動」の発端となった金融庁の報告書で注目すべきだったこと――。実は現在の金融機関への痛烈な批判とも読み取れる。勤続30年の元みずほ行員が斬る!
筆者が調査 「退職金の最適な運用先」は?
一般的に金融機関にとって、給与所得者との取引で重要な接点とは、(1)給与振込口座をとる、(2)家を買うときに住宅ローンをとる、(3)退職金をとる、といったところになる。前述のような金融機関の台所事情を考えれば、(1)は残高が少ないし、(2)は低金利時代でそんなに利ザヤが稼げないため、(3)に注目することになる。給与所得者にとって、一生に一度の大金である退職金を預かって、投信などの手数料が取れる運用商品を買ってもらうことが最も収益を稼ぐことができるからだ。
自分も前職を退職した時、後学のために退職金の合理的な運用先を自分なりに調査してみたことがある(ちなみに、最終的にはローン返済に消えましたが)。さまざまな金融機関の退職金特別プランという商品では、優遇した預金金利を提示して獲得に努めているのだが、内容をよくみると、一定割合を投信などのリスク商品に振り向けることが条件になっているケースがほとんどだ。
例えば、「元本保証のない運用商品を半分以上買ってくれたら、一般的に0.1%の定期預金金利を5%にします」といった組み合わせが提示されている。運用商品自体の内容説明やリスクについては、ルールに従って十分に説明してはくれるものの、こうした商品の構造上、その価格変動の要因となる変数がどこにあるか、ということまで理解して買っている人はほとんどいないだろう。
金融機関に30年勤務していた自分でも、肌感覚で納得できるような簡単な仕組みの商品はほとんどないからだ。退職金という老後に備えるべき資産の大半を、金融機関にとって収益性が高いという理由によって、リスク資産に誘導するという姿勢自体、今の金融機関が信頼できるパートナーではないことを示している。
さらに私見を述べれば、こうした複雑な運用商品に関する担当職員の金融知識や販売マインドも一般的には十分とは言えない。当然ながら、投信や保険の販売には資格が必要で、資格試験を受けて合格した有資格者のみが販売することになっており、一定の知識を持った職員が対応していることは事実だが、それはあくまでも試験に合格したということでしかない。
実際に金融機関の窓口に行って、窓口担当と話をしてもその知識レベルはピンキリであって、販売マニュアルに書いてあること以外になると、トンチンカンな会話となって、意思疎通が出来ないことも実際少なくない。優秀なベテラン担当者は、富裕層でもないわれわれの相手などしている暇はないため、いきのいい若手に当たることを祈るしかないというのが正直な感想だ。
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