勤続30年の元みずほ行員が斬る! もう一つの「年金2000万円問題」:小売・流通アナリストの視点(4/5 ページ)
「年金2000万円不足騒動」の発端となった金融庁の報告書で注目すべきだったこと――。実は現在の金融機関への痛烈な批判とも読み取れる。勤続30年の元みずほ行員が斬る!
「スルガ不正融資」の亜種は今後も出現する
極端な例かもしれないが、スルガ銀行の不正融資事件なども本質的には同根であり、ああいった事例が形を変えて発生する可能性は否定できない。日本郵政グループのような、かつて高齢者から絶大な信頼を得ていた金融機関でさえ、不正営業問題で揺れている。こうした金融現場の状況をそのままに、資産運用のパートナーだと名乗らせておけば、金融に慣れているわけではない顧客の中から、痛い思いをする人が出ることは避けられまい。
「年金2000万円不足騒動」に乗じて、積極的にリスクをとってでも資産を増やしていくべきだ、という論調も一部では起こっているようだ。金融機関主催の投資セミナーなどは、あれ以降さらに盛況であるやに聞く。しかし、リターンはリスクとの等価交換だということを体感している人は多くないようだ。投資した資金には相手があり、相手側(大概はプロ)は必ずその資金のリスクリターンを計算して判断しているので、割のいい投資などは理屈として存在しない。(リーマンショック級の環境変化ならウォール街のプロだって吹っ飛んだ)。
自らの蓄積したノウハウを基に、リスクをとって起業でもするのであれば、ある程度自分の裁量や工夫によって成功確率を上げていくことが可能だろうが、投資は自分の努力によって結果を変えることは不可能だ。しょせん、運用結果とは神頼みと同じ、乱暴に言えば運でしかない。なけなしの元手をつぎ込んでしまえば、運が悪いと大損害を被り、窮地に陥ることになる。だからこそ、投資は「長期、分散、積立」なのであり、まとまった投資は諦められる範囲でしか行ってはならないのだ。
特に働いて稼ぐことが難しい高齢者は一回大失敗したら挽回するチャンスがない。運用結果がどうなろうと手数料を稼ぐことのできる金融機関のセールストークに乗せられて、退職金の大半をつぎ込むようなことだけは止めておくことだ。
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