“上司なりすまし”被害も 深刻化する偽動画「ディープフェイク」の脅威:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
本物と見間違うような偽動画「ディープフェイク」が世界で問題視されている。最近では、FacebookザッカーバーグCEOの偽動画も話題になった。社長や上司になりすまして企業に電話をする「ディープフェイク音声」の被害も発生。日本でも注意が必要だ。
ディープフェイクが及ぼす悪影響
これらディープフェイクが蔓延(まんえん)すると、私たちにはどんな影響があるのか。大きく見ると、3つの懸念が挙げられる。
まずは「民主主義への脅威」である。ディープフェイクでフェイクニュースを作り出し、大統領選などへ介入することもできなくはない。これまでのフェイクニュースよりも巧妙になる可能性があり、特に、こうした技術が世界で使われるようになっているという事実を知らない人なら、偽動画を本物であると信じやすくなるだろう。
2つ目は、国際情勢への影響だ。例えば、ドナルド・トランプ大統領がディープフェイクに使われ、「今、イランに向けて何発もの核兵器を発射した。30分後には現地を破壊する」と偽の発言をしたらどうなるのか。または、「北朝鮮への攻撃を20分以内に実施する」と発言したら? 北朝鮮の金正恩委員長はTwitterをチェックしているようなので、パニックになったら何をしでかすか分からない。
そして最後は、犯罪行為だ。経済犯罪なら、民間企業のCEOを使って「このままいけば収益は昨年の10倍になる」などと語る偽映像が拡散されたら、株価にも大きな影響を与えるだろう。発言前に株を買っておけば大もうけできる。
また犯罪なら、リベンジ・ポルノも考えられる。ハリウッド女優たちが犠牲になったように、一般人だって、アダルト動画に顔を使われてしまう可能性がある。ただ、この犯罪行為の可能性は、ディープフェイクが出始めたころから懸念されていたために、対策が急がれた。例えば6月には、米バージニア州が、14年に施行されたリベンジ・ポルノを禁止する法律を改正し、ディープフェイクも禁止にすることを決めた。ディープフェイクをリベンジ・ポルノに使ったら、最大12カ月の禁固刑または最大2500ドルの罰金になる。この動きは、他の州にも広がっていくとみられている。
こうした議論がメディアを騒がせるなか、ディープフェイクを巡り、さらに深刻な事態が起きていることが明らかになった。
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