吉本、かんぽの炎上会見に見る「組織の病巣」 なぜ“上下断絶”が生まれるか:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)
かんぽ生命の不正事件、吉本興業の闇営業問題と、企業のトップによる会見が相次いで批判を浴びている。“えらい人”たちの発言はなぜ不誠実なのか。そこには、権力に酔いしれたトップと、その下にいる人たちとの大きな断絶がある。
それだけではありません。絶対感の高い人は、自分の態度を決めあぐねているときほど、他者の助言や前任者がやってきたことと正反対の決断に走りやすい傾向があります。他国の大統領の名前を失礼ながら拝借させていただくと、「トランプ化」していくのです。
そして、自分の決断に反するものは「フェイクニュース」と断罪し、一部の都合のいい情報だけを取り上げ、巧みに自己を正当化します。この一般ピープルには理解できないふてぶてしさこそが、絶対感がマックスに高まったトップの性癖なのです。
「絶対感」に支配されないトップとは?
つまるところ、どんなに権力ある地位につこうとも、「絶対感」に支配されないことが何よりも肝心なのですが、「絶対感」は精神的かつ主観的感覚なので、高低のいかんは個人的要因に強く左右されがちです。
これまで行われた調査では、「公益への貢献より私益の追求」の権力志向が強い人は絶対感を抱きやすく、「私益より公益の追求」を重んじる人は絶対感を抱きづらいことが分かりました。
ただし……、両者は相反する志向ではなく、むしろ共存する欲求であるため、どちらが優勢になるかは、その個人の資質以上に組織風土や組織構造などの環境要因が影響します。具体的には、
- トップダウンの組織
- トップの顔を社員が見たことのない組織
- 社長室にトップがこもっている組織
- 縦のつながりが強い組織
- 横のつながりが薄い組織
では、絶対感を助長し、トップの影響力がクモの巣のごとく組織全体に張り巡らされ、その権威にしがみつく輩が「忖度」と「足の引っ張り合い」を公然と繰り返します。
逆に、「絶対感」に心を支配されない、優れた権力者が存在する組織は、
- ボトムアップを大切にしている
- トップが常に現場を歩いて回り、社員に声をかける日常がある
- 縦の壁がなく、横との連携がある
- 現場に裁量権が持たされている
といった具合に、上下の壁がなく、トップは現場の意見を大切にしています。当然ながら、そういうトップがいる組織は、健全さを保ち、腐ることはありませんし、そこにいるメンバー一人一人が生き生きと働いています。
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