連載
パタハラ回避で50代が転勤? カネカ騒動が示した“辞令と家族”のリアル:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)
カネカの「パタハラ」騒動は、SNSに書き込んだ側も炎上するなど、さまざまな見方が出ている。一方、本来は個人の成長にもつながる「転勤」がネガティブに捉えられた。育児だけでなく「介護」とも密接に関わる転勤。そのメリットを生かす経営が求められる。
日本有数の化学メーカー、カネカの元社員の妻のTwitter投稿で広がった「パタハラ(パタニティ・ハラスメント)」騒動。2週間近くがたち、事態は微妙な方向に進んでいます。
妻のアカウントの過去の書き込みに「夫の起業準備」をうかがわせる記述があり、逆炎上しているのです。
事の発端がTwitterですし、カネカ側の対応もWebサイトで展開されるなど、全てがネット上の情報なので、まったくもってわけが分かりません。が、ある意味、“これぞSNS”なのかもしれません。
事実は一つしかありませんが、受け手が変わり視点が違えば、自ずと真実は様変わりします。人は観念の生き物なので、見えるものを見るのではなく、見たいものを見る。それは「人間の業」でもあります。
ただでさえSNS上の情報は、事実の「一部」が切り取られたものですから、受け止め方はどうにでもなる。さらに、“そこに書かれた言葉”に皆が一斉に反応し、瞬間湯沸かし器的に真実がまるで一つかのごとく広がっていきがちです。
でも、人が人である限り、誰が正しくて誰が間違いということはなく、人の数だけ「真実」は存在するのです。
ただし、「事実」は一つ。今回の事例では「ある男性会社員が育児休暇を取り、その直後に転勤を命じられ、退職した」という事象はまぎれもない事実です。それ以上でもそれ以下でもありません。
関連記事
- 「もう、諦めるしかない」 中高年化する就職氷河期世代を追い込む“負の連鎖”
40歳前後になった「就職氷河期」世代に対する支援に、国を挙げて取り組むことを安倍首相が表明した。しかし、就職時の不況や非正規雇用の拡大など、さまざまな社会的要因によって追い詰められた人たちの問題は根が深い。実効性のある支援ができるのか。 - 「会社員消滅時代」到来? 令和時代の“自由な働き方”に潜む落とし穴
平成30年間で会社の「働かせ方」は変わり、働く人との“信頼”は崩壊した。令和時代の働き方はどうなるのか。政府が公表している報告書を読み解くと、「自立」という美しい言葉が目立つ。だが、そこには落とし穴があって……。 - 働き方改革で残業が減らない理由 ちっとも進まない「経営者改革」
働き方改革について7割の人が「実感なし」と回答したアンケート結果が話題になった。「長時間労働の削減」が改革の代名詞のようになってしまっているが、本来はそうではない。生き生きと働ける社会にするために必要なのは「経営者改革」だ。 - 減り続ける「管理職のイス」と“死亡率”急上昇のリアル
「管理職になりたくない」人が6割を占める調査結果が問題になっているが、管理職の椅子が減っている現状を考えれば、希望者は4割で十分。それよりも、管理職の在り方そのものを見つめ直す必要がある。 - なぜ日本人は「労働の奴隷」に? 新時代の働き方のヒント
日本のものづくりが世界に後れを取り、生産性が下がっているのは、私たちの働き方に「遊び」がなくなったからだ。江戸時代の職人たちは人間らしい働き方をしていたのに、なぜ現代の働く人たちは「労働の奴隷」になってしまったのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.