中国が握りたい「海底ケーブル」覇権 “ファーウェイ撤退”の本当の狙い:世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)
中国・ファーウェイを巡ってさまざまな動きが報じられているが、「海底ケーブル」ビジネスについてもひそかに注目されている。世界の通信を支える超重要インフラである海底ケーブルでも、中国と米国などの間で緊張感が高まっていくかもしれない。
「盗聴」「災害」海底ケーブルのリスク
ただ海底ケーブルにもリスクはある。例えば、12年に大規模なハリケーンが米東海岸を襲った際には、海底ケーブルが損傷するケースが起き、通信に支障が出た。また06年には、台湾沖で起きた地震と台風によって、8本の海底ケーブルが使えなくなった。それにより、東アジア諸国でデータ通信ができなくなり、修復に数カ月がかかる事態になった。
海底ケーブルにはさらに別のリスクもある。国際電話などの通信に使われた電話線の時代から、海底を走る通信ケーブルは諜報機関によって盗聴されてきた歴史がある。古くは第二次大戦以降から、米国とソ連が海底ケーブルで盗聴合戦を繰り広げた。
最近でも、元CIA(中央情報局)で米機密文書を盗み出して暴露したエドワード・スノーデンが、米政府による海底ケーブルを使った情報収集活動を白日の下にさらしている。この監視工作は「アップ・ストリーム」と呼ばれ、海底ケーブルが陸のケーブルとつながる「IXポイント」などを通るデータを大量に抜き取っていた。
実はこうした米国のスパイ活動が明らかになった際、全てのデータが米国の光ケーブルを通って届いていたブラジルでは、米国からデータを監視されていたことが判明。ブラジルは憤りを隠そうとせず、公然と米国を非難し、その後、米国を通らない独自の海底ケーブルの敷設を発表した。ブラジルからポルトガルなどを結ぶこの海底ケーブルは、20年からサービスを開始するという。
またこうした国家間の争いに巻き込まれたくない民間のIT大手Googleは、10年から米ロサンゼルスと千葉を結ぶ海底ケーブルや、ロサンゼルスと南米チリを結ぶ海底ケーブルを次々に完成させている。複数のインフラを確保しているのである。
ここまで説明が長くなったが、こうした海底ケーブルに、中国が誇る企業のファーウェイも参入しているのだ。実際には、ファーウェイの子会社であるファーウェイ・マリーンが海底ケーブル事業を行っている。
関連記事
- ファーウェイの次に狙われる? 中国の「監視」を支えるあの企業
ファーウェイに続いて、中国の監視カメラ大手のハイクビジョンが米商務省の“ブラックリスト”入りするのではないかとうわさされている。世界トップシェアを誇る同社の監視技術の裏に何があるのか。そこにはファーウェイとの共通点もあって…… - ファーウェイのスマホは“危険”なのか 「5G」到来で増す中国の脅威
米国が中国・ファーウェイの通信機器を使わないように友好国に要請していると報じられた。なぜファーウェイを排除しようとするのか。本当に「危険」なのか。その背景には、次世代移動通信「5G」時代到来によって増大する、中国の脅威があった。 - 追い詰められるファーウェイ Googleの対中措置から見える背景
中国の通信機器大手、ファーウェイに対して、米国が「最後通告」ともとれる措置を実施。企業も対応を検討しており、ファーウェイ機器でGoogleのアプリやサービスなどが利用できなくなる可能性がある。騒動の背景と、今後のファーウェイの動きとは…… - 罰金を科された「TikTok」は、第2のファーウェイになるのか
世界的に人気の動画共有アプリ「TikTok」の運営企業が米政府から罰金を科された。ファーウェイに続き、また中国企業が米国の目の敵にされている、と不穏な見方が浮上している。なぜTikTokに対する警戒感が広がりつつあるのか。この騒動はどこへ向かうのか。 - 僕らのヒーローだったジャッキー・チェンが、世界で嫌われまくっている理由
香港アクション映画の象徴的存在、ジャッキー・チェンのイメージダウンが止まらない。隠し子である「娘」の振る舞いや、自伝で語られた「ダメ人間」ぶりなどが欧米やアジアで話題になっている。私たちのヒーローだったジャッキーに何が起きているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.