太陽光ベンチャーを倒産に追い込んだ“制度の壁”――急成長企業の未熟さも足かせに:あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(4)(3/3 ページ)
成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある。どこにでもある普通の企業はなぜ倒産への道をたどったのだろうか。存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事=前兆」にスポットを当て、「企業存続のための教訓」を探る。
超高額な違約金と顧客紹介料を支払った「怪」
のちに裁判所に提出された破産申立書によると、岡山県倉敷市のメガソーラーを売却した後で用地に不備が発覚し、事業継続を断念したことで購入者から違約金を請求されていた。
15年には、147件もの太陽光発電所を保有する特別目的会社を投資会社に売却する契約を締結したものの、一部しか売却が実現しなかったため、実に13億5000万円もの違約金を支払っている。当時の年商の4分の1もの金額だ。
さらには、別の企業グループにも、顧客紹介料として総額5億3000万円を支払っている。資金繰りがひっぱくするのは当然だ。
こうした未熟さを自覚してのことなのか、電現ソリューション取締役には経験豊富なメンバーが就任していた。スーパーゼネコンの代表取締役副社長経験者、財閥系大手ゼネコンの代表取締役専務経験者、外資系大手IT企業出身の大学教授などである。監査役も行政書士が務めた。当社代表の人柄に惹(ひ)かれ、役員に就任した人物もいたという。
しかし17年3月16日、東京国税局査察部、いわゆる「マルサ」が調査に入り、内諾していた融資が下りなくなったことで万策尽きた。
太陽光パネルなどの訪問販売から、太陽光発電システムを設置した土地の分譲販売へと大きく舵を切った、電現ソリューションの目の付けどころはよかったはずだ。そこに立ちはだかった制度の壁は、確かに痛手だったには違いないが、一方では販売済みの用地の不備の発覚や、法外な顧問料の支払いなど、企業としての未熟さも目立つ。
旺盛なチャレンジ精神は、ベンチャー企業の成功に欠かせない。しかし経験不足のまま大きな事業に足を踏み入れると、ひとたび大きな壁が立ちはだかったときにガタガタと経営基盤が崩れかねない。
チャレンジを重ねながら、いかに企業としても成熟していくか。若い会社ならばなおのこと、勢い任せで突き進むのではなく、方々に細かく慎重に目配りする必要があるということだ。
著者プロフィール
帝国データバンク 情報部
1900年創業の民間信用調査会社。国内最大の企業情報データベースを保有。帝国データバンク情報部は、中小企業の倒産が相次いだ1964年、大蔵省銀行局からの倒産情報提供に応じるかたちで創設。情報誌「帝国ニュース」の発行、「全国企業倒産集計」などを発表している。 主著に『なぜ倒産』(日経BP社)『御社の寿命』(中央公論新社)『あの会社はこうして潰れた』(日経BP社)などがある。
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