買った後に自分で値段を決める ネットプロテクションズが「あと値決め」(2/2 ページ)
サービスなどを購入した後に、ユーザーが自ら値段を決められる仕組み「あと値決め」をネットプロテクションズが開発。サービスを受けたあと、ユーザーは利用体験の良し悪しに応じてWeb画面上でバーを操作して値段を決める。最初のハードルを下げることで、新しいビジネスを生み出せる可能性もある。
使ってもらえれば、価値を感じてもらえる
あと値決めを導入したベアーズでは、高品質な利用体験を提供することで、ユーザーが適切な値段を決めることに期待する。「品質に力を入れてきたので自信がある。価値と価格を揃えるられるのが楽しみ」だと、マーケティング本部CX・ブランディング推進課の高山直樹シニアマネージャーは話す。
値段の後決めは、商品や内容次第ではうまく機能する。発表会に登壇したBANKの光本勇介CEOは、著書を0円で販売した経験を話した。書籍の末尾にQRコードを付け、0円から1000万円まで好きな価格をユーザーが選んで払えるようにしたところ、1冊当たり平均で5000円くらいの支払いがあったという。一般的なビジネス書の価格1500円に対して、価格ベースで3倍だ。
「お金を払って一歩を踏み出すのは難しい。0円だから読んでみたという人も多くいた。最初のハードルを下げることで、新しいビジネスを生み出せる可能性がある」(光本氏)
可能性は未知数。販促キャンペーンの次のステップに進めるか
後からユーザーが値段を決める方法には、光本氏の例のように大きな可能性がある一方で、性悪説に立てばとにかく安い価格でサービスを利用しようとするユーザーを引きつけてしまうリスクもある。
エアークローゼットの天沼聰社長は、ユーザーが価値に見合った適切な値付けをすることに期待しつつ、今回の取り組みはまだ実証実験だと話す。まずは9月6日までの期間限定キャンペーンとし、ユーザーの反応を見る。「値決めという支払いのステップが増える。登録のあとのわずらわしさをユーザーがどう捉えるか。そして、定常的に価格の後決めを実現することに向けてシステム連携を整えたい」(天沼氏)
ユーザーが後から値段を決めるといっても、月額料金の半額程度を最低価格とし、上乗せ料金をユーザーが決めるのが今回の実態だ。新規入会キャンペーンに近い位置付けともいえる。
ベアーズでも、定価1万620円の初回お試しプランを、最低価格6300円として提供する。今回の取り組みは「新しいターゲットのユーザーを獲得するため」(高山氏)としており、販促キャンペーン的な意味合いが強い。
デジタル版チップとなるか 超過料金分を還元
価格の後決めが定着した未来はどうなるか。高品質なサービスに対する対価として、チップを支払うような位置付けになるかもしれないと、ホテル向けの価格最適化サービスを提供する空の松村大貴社長話す。海外ではチップ文化があり、質の高いサービスを受けたと感じたら、相応の対価をチップとして渡す。そのデジタル版というわけだ。
実際エアークローゼットでは、あと値決めで定価を超える支払いがあった場合、超過分は服を選定したスタイリストに還元するとしている。
サービスや商品の質に応じてユーザーが価格を決めるという今回のサービス。ユーザーのリテラシーが追いつくかどうかが、成功のカギとなりそうだ。
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