「来なくていい」と言われても不安? 台風があぶり出す“会社員という病”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/5 ページ)
大きな被害を出した台風15号。駅に詰めかけた人たちが長蛇の列を作り、混乱が続いた。これを変えるには、働く人たちの意識の問題も大きい。世の中の仕事の多くは「不要不急」。会社員としてではなく、人として「出社しない」判断ができる社会であるべきだ。
世の中は「不要不急の仕事」だらけ
言葉通り捉えれば「今、すぐにやらなくてはならない、重要な仕事」、すなわち、衣食住に直結する「今それがないと生きていけない」仕事になります。
では、いったいどれほどそんな仕事が世の中にあるのでしょうか? いったいどれだけの人が、そんな仕事に就いているのでしょうか?
例えば、自分のこれまでの経歴で考えると……、客室乗務員(CA)の仕事は政府の要請などによる緊急時のフライトでない限り不要不急です。お天気キャスターの仕事は、それこそ台風でも来ない限り、不要不急。講演会も、講義も、書籍の執筆も、はたまたこのコラムも、不要不急以外の何物でもない。
いずれの仕事も「その時間に、自分が、その場所に行かなくていけない仕事、時間通りに終わらせなくてはいけない仕事」ではありますが、それが「不要不急か」と聞かれれば、答えはノー。
ただ、だからといって全く必要のないものではなく、今すぐに必要でなくとも後々に必要なものだったり、急ぎではないけどとても大切なことだったり。不要不急な仕事とは、それがなくとも最悪生きていくことだけはできる、というレベルだと思うのです。
言い換えれば、世の中、救急救命医など人の命に関わる仕事以外は、不要不急の仕事だらけで。「僕の仕事は不要不急なのか」などと落ち込むことも、「僕は存在価値がないのか」などと心配しなくてもいい。社会には不要不急の仕事に関わっている人があふれていて、忙しそうに動き回っている人の仕事だって、不要不急の仕事の山なのかもしれないのです。
ただし、それが仕事として存在する以上、社会に必要な仕事。そして、その仕事が必要とされ続けるには、自分が仕事に価値を与える働き方を、自分が必要とされる働き方をすることが大切になります。
「会社員する」のではなく、「仕事する」人になる。その意識を持てるかどうかが肝心なのです。
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