「来なくていい」と言われても不安? 台風があぶり出す“会社員という病”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(5/5 ページ)
大きな被害を出した台風15号。駅に詰めかけた人たちが長蛇の列を作り、混乱が続いた。これを変えるには、働く人たちの意識の問題も大きい。世の中の仕事の多くは「不要不急」。会社員としてではなく、人として「出社しない」判断ができる社会であるべきだ。
自然災害で問われる「あなたがそこにいる意味」
少々ややこしい話になりましたが、自然災害は常に根源的な問いを人に投げかけます。
東日本大震災は、さまざまな形で「あなたがそこにいる意味」を問いかけました。「自分に何ができるか?」「自分にできることは何か?」と、誰もが「自分がここにいる意味」をまさしく自問しました。
当時のことを思い返せば、今回の台風で「痛勤地獄」を味わう必要はなかった。
本当にあの日会社に行かなくてはならない人だけが「会社に行く」という選択をすれば、そういう人たちがもっと早く会社に行けたし、彼ら彼女たちが来ることを待ちわびている人たちを安心させることができたはずです。
当然、会社は「出社させない」という決断をすべきでした。でも、自ら「出社しない」という決断を、自立した成人として下してもよかったし、そういう決断をもっと多くの人ができる社会が、本当の意味で成熟した社会なのかもしれません。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)
お知らせ
新刊『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)が発売されました!
2017年発売の『他人をバカにしたがる男たち』で解説した「ジジイの壁」の背景となる「会社員という病」に迫ります。
“ジジイ”の必殺技は「足を引っぱる」こと。公の場で「彼女の発言を補足しますと……」と口を挟んでしまう“面目つぶし”、「私は指示したのですが○○が動かなくて……」と相手を悪者にする“責任逃れ落とし”、他人に関する必要のない情報を上司に伝える“アピつぶし”、そして“学歴落とし”や“悪評流し”――。
不毛な言動に精を出して「ジジイ化」してしまう人たちのジレンマと不安の正体について解説します。
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