なぜデンマークは、消費税が25%でも軽減税率を導入しないのか:専門家のイロメガネ(7/8 ページ)
軽減税率は、一見すると正しそうな制度に見えるが、この制度が原因で、小売業界と飲食業界は混乱の極みにある。軽減税率は徴税コストが高く、線引きに手間がかかり、脱法行為を生み出しかねず、高所得者に有利。だから軽減税率よりも別の手段で還元した方が好ましい。デンマークはこのように軽減税率そのものを完全に否定している。
キャッシュレス決済によるポイント還元も金持ち優遇策
先日、消費増税を前に、過去の増税時に比べて駆け込み消費があまり発生していないと報じられた。これは軽減税率に加え、ポイント還元がキャッシュレス決済に限り、大企業では2%、中小企業では5%と増税分以上に行われる事が理由で、増税後に買い物をした方がかえって有利なケースもあるという状況による。
過去に消費税を導入した、あるいは導入しようとした政権はほとんど例外なく選挙で負けている。二度も延期した上でここまで過剰な対策を打たないといけないほど、日本の政治家にとって消費税はトラウマということなのだろう。
各種の施策は増税による駆け込み消費とその反動への対策だが、長い目で見れば駆け込みとその反動が同じ振れ幅であれば、行って来いでプラスマイナスゼロだ。それを平準化することにあまり意味はない。それよりポイント還元もまた「消費額に結び付いていること」で間違った仕組みになっている。
所得や資産の多い人の方が当然支出は多い。したがって支出額でポイントが決まるのなら、軽減税率と同じくポイント還元も高所得者や資産家を優遇することになる。実質的な効果は低所得者の負担軽減ではなく、補助が不要な層にお金をばらまく事で、見かけだけ景気が落ち込まないようにする目くらましということになる。
対策なしで消費税を導入すれば、駆け込みと反動による景気の上下が発生する。下落の部分だけを見れば景気悪化なので、だから消費税を上げなければ良かったと短絡的な批判を受けて支持率に悪影響を及ぼし、選挙に負ける可能性すらある。
実際には日本全体の歳入を見れば、消費税と所得税と法人税を合計した税収よりも、より多くの社会保険料を取られている。それにも関わらず、話題に上るのは目に見えやすい消費税ばかりだ。だからこそこういった無駄な「増税対策のコスト」が発生する。しかも裕福な層にばかり使われる。無駄の極地だ。
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