仕事と休暇を一緒にする「ワーケーション」 JTBとスノーピークがハワイで展開する事業の背景を直撃:リゾート地でリフレッシュ(3/4 ページ)
テレワークの1つである「ワーケーション」。仕事と休暇を一緒に取る新たな働き方だ。今日本では徐々に導入する企業が増え、事業として展開する企業も増え始めている。中でも、JTBとスノーピークは、ハワイでワーケーションを行うプログラムを開始。テレワークとしても珍しい「野外」で行うプログラムはどのようにして生まれたのか。また、日本でワーケーションは根付いていくのだろうか。
オファーはJTBから
キャンピングオフィスハワイについては、JTB側からオファーがあった。JTBは、1964年にハワイ事務所を設立。以来、50年以上にわたりハワイ事業に注力している。その一環として、ハワイでのキャンプ需要に注目。新規顧客の掘り起こしをどう行うか検討する中で、スノーピークのサービスに目を付けた。また、並行して働き方改革の事業開発も行っていたこともあり、両社の取り組みが始まったという。JTBからのオファーに対して、スノーピークはまず新潟県の自然豊かな環境にある本社にJTBを招待。屋内と屋外での打ち合わせを行ったところ、JTBの担当者が屋外での会議を新鮮に感じただけでなく、意見も活発に出るようになった。こうした経緯から、野外でチームワークを高める現行のプログラムに落ち着いた。
本サービスでは、会場や利用人数などにも左右されるが、1人1万3000円程度のライトプランから用意した。よりラグジュアリーなプランでは、オアフ島の住宅地であるハワイカイにある邸宅を使用。経営層や来賓を招いたミーティングでの利用を想定し、1人当たり5万〜10万円のプランもある。なお、料金には宿泊費や航空券の代金は含まれていない。
使用されるサテライトオフィスは、もともとJTBハワイが所有していた施設をワーケーション用に改造。同社の社員などが出張時に使っていたので通信環境等は整っていたが、インテリアを中心に内装をリニューアルした。
もともと、スノーピークはワーケーション事業を展開していた。神奈川県横須賀市にある観音崎京急ホテルと提携。共同で、17年2月にオフサイトミーティングもできるグランピング施設を開設した。藤本氏によると、土日には97%ほど、平日を含めても全体で70%ほどの稼働率だという。一方、なかなか法人の利用がなかった。そこで、キャンピングオフィスハワイを追う形で19年7月に「CAMPING OFFICE KANNONZAKI」を展開している。
野外で行う効果
スノーピークの手掛ける事業では、「座学」よりも「体験」を重視する。藤本氏によれば、野外のプログラムはチームワークの向上に良い効果をもたらすという。例えば、会議用にテントを設置する際にはメンバー同士で声を掛け合いながら作業を行うので、自然と「アイスブレイク」ができる。会話のウォーミングアップが済んでいるので、いざ会議が始まった際に、議論が弾みやすい傾向にあるという。また、場が温まっているが故に、普段の会議では遠慮して出ないような大胆な意見が出ることも多いのだとか。
キャンプにつきものの「焚き火」にも良い効果がある。以前にキャンプ研修を手掛けた企業では、普段はお互いに会話を交わさないような役職者たちが、焚き火の時間には自ら椅子を持って集まり仲良く話し込んでいることもあったという。
このように、野外のプログラムではお互いがプライベートな部分まで腹を割って話し合える。普段の肩書を外し、役職や立場を超えて、社員同士がフラットな立場で会社の今後や、現状の課題解決などについて議論を深めることができるのだ。
話を聞いていて気になったのが「天気」だ。雨が降ったり風が吹いたり、天気が荒れ模様になると、せっかくアウトドアで行う会議が台無しになってしまうのではないか。これに対しては「失敗経験も重要」という考えだ。藤本氏は、「成功したときというのは案外記憶に残らない。逆に、失敗したことは覚えているもの」と話す。例えば、何か忘れ物をした人がいれば、それが後々の思い出話にもなる。テントの設営や会議も、雨の中で力を合わせてやればこそ、チームの結束力を高めるきっかけになる。「ビジネスにイレギュラーはつきもの。そういった意味で、野外で行うことはかなり親和性がある」。
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