子どもの数は減っているのに、なぜ「恐竜博」で110分待ちになるのか:水曜インタビュー劇場(絶滅公演)(2/6 ページ)
国立科学博物館で開催されている「恐竜博2019」が、人気を集めている。9月の3連休には、最大110分待ちのときも。子どもの数は減っているのに、なぜ恐竜を見るために行列ができるのか。恐竜博の監修を務めている真鍋真さんに話を聞いた。
デイノニクスを借りるために
土肥: 恐竜の展覧会って、夏休みに開催しているといったイメージが強いですよね。子どもたちが足を運んで、そこで衝撃を受けて将来の“恐竜博士”が生まれたり、夏休みの自由研究のテーマにしたり。恐竜博2019年も夏休み期間中に開催していましたが、この取材は9月の中旬に行いました。平日の夕方なので、失礼ながら「ガラガラなんだろうなあ」と思っていたら、全く違う。たくさんの人が来館していて、目玉の恐竜の前では行列ができていました。
例えば「デイノニクス」。50年前に、この恐竜が発見されて「鳥類の恐竜起源説」につながったわけですが、今回はデイノニクスの指先と手首を展示することに。ワタシも実際に見て、「こんな大きなツメでひっかかれたら、たまらんなあ」と思ったわけですが、この標本は日本初上陸だそうですね。普段は米国の博物館が所蔵していて、なかなか外に出さないのにもかかわらず、なぜ今回の恐竜博で展示することができたのでしょうか?
真鍋: デイノニクスの爪はイエール大学の博物館で所蔵されているわけですが、そこでも展示したことはほとんどありません。そういった状況なので、借りるのは難しい。なぜ外部にあまり出さないのかというと、論文を書くのに必要だから。例えば、ある研究者が新種の肉食恐竜のことを研究している場合、どうするのか。「これまでの種とは違いますよ」といったことを紹介しなければいけなくて、その際、デイノニクスの標本と比べて、「自分が研究している恐竜はここが違うんですよ」ということを証明しなければいけません。
そうした作業が発生するので、デイノニクスの標本を見るために博物館にはたくさんの人が訪れているんですよね。そういった事情があるので、博物館としてはなかなか外に出したくないんです。
土肥: ふむふむ。“門外不出”のような貴重な標本をどうやって日本に持ってくることができたのでしょうか? 先方との交渉はどんな感じで?
真鍋: 交渉は難航しました。ちょうど50年前に発見されたこともあって、タイミングがよかったのかもしれません。展覧会で「半世紀を振り返る」といった感じでアピールできるので。ただ、最終的な決め手は「台」でした。
土肥: 台? どういう意味でしょうか?
真鍋: 恐竜博でツメをどうやって展示しているのか。透明のアクリル板でできた台があって、そこにのせて見えやすくしているんですよね。見えやすくしているだけでなく、見た目も美しい。というわけで、博物館の担当者にこのように言いました。「アクリル板の台をつくって、デイノニクスのツメはそこで展示します。そして、展覧会が終われば、その台をお譲りしますので、貸していただけないでしょうか?」と。
イエール大学の博物館にはツメを展示できるような台がなかったので、「それいいね!」と言ってくれて、日本で展示できるようになりました。
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