決済から商品管理まで ELESTYLE「OneQR」が提供する「アグリゲーター決済」でキャッシュレスは普及するか:周回遅れの日本
キャッシュレス決済では中国に周回遅れの日本。中国で普及した背景には「アグリゲーター決済」の存在があるという。アグリゲーター決済を起爆剤に、中国では2014年から17年にかけて決済額は約100倍に伸びた。ELESTYLEが提供するQRコードは、そのアグリゲーター決済の1つだという。
10月1日から消費税が10%に上がった。その一方で、政府はキャッシュレスを推進しようと「キャッシュレス・ポイント還元事業」も並行して開始。対象店舗でキャッシュレス決済を行うと、決済額の2%か5%のポイント還元を受けられるものだ。
MMD研究所が発表した「2019年9月 スマートフォン決済に関する実態調査」によると、キャッシュレス決済として最も人気が高いのはクレジットカード。次いで、カード型の電子マネー、スマホ決済という結果となった。ポイント還元事業を受けて、各小売店はこうした幅広いキャッシュレス決済に対応する必要に迫られている。一方で、決済方法が多様化すると、それぞれの決済ごとに売り上げが細分化してしまい、統合するコストが生じてくる。また、人件費の高騰などで人手不足も進行している。
こうした課題を解決するのが、ELESTYLE(東京都千代田区)の提供する「OneQR」だ。同サービスは、乱立するQRコード決済だけでなく、電子マネーやクレジットカードなどの決済を、同社の提供する決済プラットフォーム「elepay」を介して1つのQRコードに集約。決済を一元化し、売り上げの管理を簡略化できる。それだけではなく、売り上げデータの管理や在庫の管理、購入者のデータ収集までをワンストップで可能にする。小売店での展開だけでなく、シェアリングサービスや宿泊施設、自販機などでの展開も見込んでいるという。
利用者は、QRコードを読み込み、専用のサイトにアクセス。サイト上には商品や駐車場の番号などが並んでいる。それぞれを選んだ後に、決済方法を選択して支払いが完了する。外国語にも対応しており、ユーザーの使っているデバイスで設定されている言語に対応して表示される。現在は英語と中国語に対応しているが、他の言語にも対応可能だという。管理者はダッシュボードから各商品の売り上げや、どの決済方法が使われたか、また在庫情報などを管理できる。賞味期限やセールの設定も可能。サービスの利用に際してのシステム開発などは不要で、月額500円の利用料(QRコード1個につき、税別)と、1件につき0.3%の決済手数料だけで利用できる。
親和性のある企業として、担当者は「ベンチャー」を挙げる。決済システムに開発コストがかからず、短時間でサービスをローンチできることが理由だ。ユーザーに合わせたカスタマイズにも対応している。例えば、自転車のシェアリングサービスや駐車場などでの決済に使う場合には、決済に対応して鍵の解除をアプリ上で行えるようにできるという。
QRコードを一元化するサービスには、一般社団法人キャッシュレス推進協議会(東京都港区)の提供する「JPQR」が、また決済の一元化サービスにはリクルートライフスタイルの提供する「AirPAY」などがある。しかし、JPQRはQRコードの一元化のみでクレジットカードなどには対応しておらず、AirPAYは読み込み用のハードを必要とする。担当者は「各種決済に対応し、POS管理なども行えてハードも不要なサービスはなかなかないのでは」と話す。
同社の担当者によると、こうした決済を一元化できるサービスは「アグリゲーター決済サービス」と呼ばれる。同社の発表によれば、中国では14年から17年にかけて、モバイル決済のユーザー数が2.15億人から5.62億人へと倍増。決済金額は、22.6兆元から202.9兆元へと10倍近く成長している。この背景にあるのが、アグリゲーター決済だという。日本でもQRコード決済が脚光を浴び始める中、アグリゲーター決済とともにキャッシュレスは普及していくのだろうか。
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