なぜ私は「イクメン」と呼ばれるとイラっとしてしまうのか:新連載・「イクメン」と呼ばれて(2/4 ページ)
共働きで子どもを育てている筆者。家事と育児をバリバリこなしている。なぜ「イクメン」と呼ばれるとイラっとしてしまうのか。
なぜ、「イクメン」という言葉にイラっとするのか
妻も私もお互いがやれるだけやって、大変な暮らしを乗り切ろうということは覚悟していました。われわれ夫婦と同じような苦労を抱えている方々はたくさんいることも承知しております。ただ、子育てをして気付いたのですが、独身の方や、パートナーに育児や家事をかなり任せているビジネスパーソンの方には、子育ての“リアル”を伝えにくいなあと思わされる機会が多いので、あえて長々と私の置かれている状況を解説しました。
さて、こんな私のことを「イクメン」と表現されるのには違和感があります。理由は3つあります。
言葉が軽すぎる
イクメンという言葉が本格的に浸透し始めたのは、2010年に「イクメンプロジェクト」を厚生労働省が立ち上げた頃だとされています。立ち上げ時のリリースには「働く男性が、育児をより積極的にすることや、育児休業を取得することができるよう、社会の気運を高めることを目的としたプロジェクトです」と記載されています。背景には、同年6月30日に施行された改正育児・介護休業法もあるようです。
現在、イクメンプロジェクトの公式Webサイトを見ると、「イクメンとは、子育てを楽しみ、自分自身も成長する男性のこと。または、将来そんな人生を送ろうと考えている男性のこと」とされています。
男性が子育てをするのはハードルが高いので、「イクメン」という明るくて軽やかな言葉を積極的に使い、参加を促そうという趣旨だと推察いたします。社会運動を進めるためには、キャッチーな言葉が必要だとも理解してはおります。
しかしながら、カッコイイ男性を指す「イケメン」と語感が酷似していることも重なって、言葉が軽すぎる印象を受けてしまいます。
必死に家事や育児に取り組んでいる母親や父親からすると、とてもじゃないですが「楽しむ」とか「成長」なんて考える余裕はないでしょう。政府は働く女性を増やそうと「輝く女性の活躍を加速させる」などというスローガンを掲げていますが、妻は「子どもはかわいいけど、(忙しすぎて)私はボロボロ」とため息をつくこともあります。つまり、実態は死ぬほど大変なのに、中身が薄いと感じさせられる言葉で表現されるとイラっとしてしまうのです。
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