休日も“心”は疲弊 働きがいに影を落とす「休み方」の落とし穴:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/5 ページ)
2019年版の労働経済白書では「働きがい」を数値化して分析。「休み方」と働きがいの関係も調査された。ただ休むだけでなく、仕事から心理的距離を置いたり、仕事以外の時間をチャレンジのきっかけにしたりできる休み方をしないと、“心の疲れ”は癒やせない。
“心の疲れ”を癒やすには「資源」が必要
「休む権利」については、本コラムでも取り上げ、その重要性を説いてきました(参考記事:なぜ日本人は「労働の奴隷」に? 新時代の働き方のヒント、「1カ月の夏休み」は夢? 日本人の“有給の取り方”がズレている、歴史的背景)。
人間には、「疲れる→休む→回復する」という「回復のサイクル」があり、心身ともに元気になれば自ずと英気が養われ、やる気は出ます。しかしながら、疲れは時間がたてば自然に消えていくものではなく、「疲れをとる作業」が必要です。
特に、精神緊張や時間的切迫度を伴う仕事は心的な疲れをもたらし、「食べて寝れば回復する」というほど、単純ではありません。心的な疲れを癒やすには、適度な運動、精神的ゆとり、遊び、お喋り、笑いなど、“心を癒やす資源”が必要不可欠です。
先の調査では、休む権利について「リカバリー経験」という言葉を用い、「心理的距離」「リラックス」「熟達」「コントロール」といった4つの経験に分類していました。「心理的距離」とは仕事から物理的、心理的に離れている経験で、仕事に関することを一切考えない状態です。 「リラックス」は文字通りくつろぐ経験、「熟達」は、余暇時間を使って自己啓発に励む経験を指します。そして、最後の「コントロール」とは、余暇時間に何をどのように行うのかを自分で決められる経験のこと。
つまり、どういった休みの経験(リカバリー経験)を働く人がしていて、それらの経験と働きがいがどのような関係にあるかを考察したのです。
では、どんな結果が得られたのか。具体的に見ていきましょう。
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