ナイキはなぜ中国に屈したのか 巨大市場を巡る“圧力”の実態:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
米NBAチームGMが香港デモの支持を表明して騒動になっているが、中国でビジネス展開するスポーツ大手のナイキはダンマリを決め込んでいる。社会的なメッセージを発信してきた同社でさえ、巨大市場を武器にされると口をつぐんでしまう。そこに中国ビジネスの難しさがある。
巨大市場を失う怖さ
ここ直近の四半期で、ナイキの中国での売上高は27%も増加し、17億ドルに達している。シューズだけを見ても10億ドルを超える。特にバスケットボール人気の高まりで、これまで21四半期連続で、二桁の成長を見せているという。中国だけで、19年度は62億ドルの売上高を記録、これは前年比で21%増だ。北米が7%増であることを考えると、同社のビジネスにとって中国がどれほど重要なのかが分かる。
また、ナイキはバスケットボールの中国代表チームの公式ウェアも担当しており、中国との結び付きはかなり強い。巨大な中国市場でビジネスが軌道に乗っているのに、いちGMのツイートで全てを台無しにするものか、というのが本音だろう。
米CNNの番組で、調査会社「NPD Group」の関係者がコメントしたところによれば、「この状況がエスカレートし、中国政府が、欧米のブランドやNBAと関係するブランドから買い物をしないよう消費者に呼び掛ければ、かなり深刻な状況になるだろう」という。
ちなみに、この騒動で難しい立場に追いやられた人の中には、レイカーズのスター選手であるレブロン・ジェームズもいる。スターが故に彼も見解を求められ、「(モーリーは)知識がなかったのだろう」と述べたが、与党上院議員から「(ジェームズのコメントは)共産党プロパガンダと同じだ」と反発を受けるなどして発言を修正する事態になった。
リーグ関係者や選手など、PRの観点からは、こういう問題に何を話すべきか、どういう立場をとるべきか、非常に難しい選択を迫られていたことは想像に難くない。いずれにせよ、ナイキがこれまでのイメージを犠牲にしてでも口をつぐむのは仕方がないことだろう。
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