日高屋グループの「焼鳥日高」が担う重要な“使命”とは? 省人化と満足度を両立させる戦略にも迫る:飲食店を科学する(4/5 ページ)
「日高屋」の運営会社が手掛ける「焼鳥日高」。焼鳥日高はグループ内における重要な使命を担っている。徹底した省人化と満足度を両立させるビジネスモデルとは?
年間コスト1274万円を削減する業務改善
省人化の効果を分析するために、焼鳥日高の売上高を分析していきます。2019年2月期決算情報によると、焼鳥日高の平均年商は約6600万円です(出典:シェアードリサーチ公開レポート「ハイデイ日高」)。
ここから1日の客数を割り出していきます。
(1): 1日の売り上げを割り出す
6600万円÷12カ月÷30日=約18万3000円(日商)
(2): 1日の客数を割り出す
18万3000円(日商)÷1300円(客単価)=約140人(1日の客数)
焼鳥日高では、1日平均140人のお客さまが来店されることになります。次に来店客数から1人当たりのオーダーを聞く時間を割り出していきます。客単価が1300円で、全商品の平均単価を割り出すと257円になります。1回のオーダーで、平均2アイテムを注文するとした場合、1人がオーダーをする回数は約2.5回。なお、1回のオーダーを聞く時間に関しては、実測値になりますが次のようになります。スタッフを呼ぶ→スタッフがお客さまのもとに伺う→オーダーを聞く→ハンディ(注文を入力する端末)を打つ→オーダーを復唱確認する→ハンディでオーダーデータを送信する――ここまででおおよそ20秒です。
(3): 1カ月でオーダーを聞く時間を割り出す
20秒(1人当たりのオーダーの時間)×140人(1日の客数)×30日=8万4000秒(=23時間)
計算上、スタッフは1カ月で23時間もオーダーを聞く作業に費やしていることになります。
次に、生ビールを注ぐ時間を計算します。1人当たりの生ビールのオーダー数を割り出してみましょう。同店は、ホッピーやハイボールなども取り扱っていますが、生ビールの1人当たり平均杯数は1.5杯程度です。1杯の生ビールを注ぐ時間は約8秒となります。
(4): 1カ月で生ビールを注ぐ時間を割り出す
8秒(1杯当たりの生ビールを注ぐ時間)×1.5杯×140人×30日=14時間
つまり、オーダーを聞く時間と生ビールを注ぐ時間を合計すると、1カ月当たり37時間の労働時間を削減できます。焼鳥日高大宮すずらん店の募集時給は1100円(深夜は1375円)です。つまり、オーダーのタッチペンと自動生ビールサーバーを導入したことで、37時間×1100円=月4万7000円のコスト削減になります。
たかが4万700円と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これが年間だと約49万円になります。そして、焼鳥日高の全店舗数(26店)に展開すると、合計1274万円の削減になります。今後の「グループ600店舗構想」に向けて、仮に焼鳥日高を100店舗展開した場合は、49万円×100店舗=4900万円の削減インパクトとなります。
こうしたコストカットの視点も重要ですが、何よりも重要なのは人材不足への対応、つまり省人化モデルへの経営シフトです。こちらは日高屋グループに限らず、これからの時代に飲食店が店舗拡大を行っていくためには、省人化対応は避けて通れない課題となります。実際に焼鳥日高の店舗のオペレーションを見ていると、この他にも省人化に向けた施策がありました。
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