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AI導入が遅れている日本企業 背景には「年功序列」にしがみつく人々テクノロジー以外の課題が浮き彫りに(2/2 ページ)

企業向けソフト大手の米オラクルと調査会社のFuture Workplaceが行った「職場におけるAI」の調査に基づいた日本企業の分析をオラクルが発表。日本は世界各国と比較してAIの導入率が低い。一方で「上司よりもロボット(AI)を信頼する」と回答した人は平均よりも多い。効率性を高める機運が高まっている日本において、なぜAIの導入は遅れているのか?

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バックオフィスへのAI導入はなぜ進まない?

 なぜ、事業部門のようにバックオフィスではAIの導入が進まないのか。岩本特任教授は、特に大企業で顕著な例として、導入システムの不統一性を挙げる。「AIの導入にはデータの統一性も重要な要素の1つ。しかし、バックオフィスで導入しているシステムのベンダーを数えると、10社以上という企業も少なくない。また『購買』や『会計』など、個別部門での導入が多いため、『全体最適』の考えがなく、それぞれのデータが点在している。これではなかなか導入を進められない」と岩本特任教授。

 導入が進まない理由は他にもある。主に大企業では、総務や経理など、バックオフィス業務を子会社へ委託しているケースが多い。AIの移管で業務を代替することになれば、子会社で業務に当たっている人員の整理も必要になってくる。


上司を信頼しない日本の労働者

 また、日本企業に顕著な傾向として「上司への信頼性の低さ」も挙げられた。10カ国全体で、「自身の上司よりロボットを信頼する従業員」の割合は64%だったのに対し、日本では76%。岩本特任教授は、産業構造の変化に人事制度がついていけなかったことを理由に挙げる。「大量生産、大量消費の時代には、経験や勘に頼る部分も大きく、年功序列がある程度機能していた。しかし、効率化が重視されるようになる中で、マネジメントにも勘に頼らない合理性が必要となってきている。これまでの年功序列式のマネジャーでは、現場との距離が生まれている」と岩本特任教授。「データで見ると、年功序列の効率が悪いと分かることがほとんど。その一方で、データを基に効率化すると困る人がAI導入や制度改革に抵抗している」とも指摘する。

 今回の発表では、AIの導入が進まないのが単にテクノロジーの問題ではなく、日本企業の構造的な問題も絡んでいることが浮き彫りになった。一部の大手企業では、労組と協調して年功序列の段階的な変更を実行しているケースが出始めてきたが、世界基準のAI導入にはまだまだ時間がかかりそうだ。


日本企業でAIの導入は今後進んでいくのだろうか(画像出所:Oracle & Future Workplace“From Fear to Enthusiasm”)
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