ホリエモンがHPVワクチンを打った理由――ハヤカワ五味と語る「感染しない、感染させない、感染源にならない」:堀江貴文が語る「予防医療」【後編】(6/6 ページ)
ホリエモンこと堀江貴文氏と、女性ファッションデザイナーで実業家のウツワ社長ハヤカワ五味氏が対談。見えないニーズを掘り起こし革新的なビジネスモデルを築いてきた異端の起業家2人が今、最も注目しているのが「予防医療」の分野だ。社会課題を解決し、将来的な顧客をどのように育てていく術があるのか、2人の起業家の対談からヒントを得たい。後編では、子宮頸がんワクチンの定期接種が再開されない中で、ビジネスを通して予防と検診を呼びかける具体的な方策を語り合った。
一人ひとりが働きかけることで実を結ぶ
堀江: 今日のテーマでこれだけたくさんの人が話を聞きにきてくれているので、いい方向には絶対向かっているなとは思います。ただ、大事なのは行動することです。ここにいる一人ひとりの力が、どこにヒットするのか分からないので。ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の支援のために行われた「アイスバケツチャレンジ」のようなことをやってもいいのかもしれないですよね。
あのキャンペーンによってALSは多くの人に知られたと思います。だからHPVについても、何かいいキャンペーンがあるかもしれない。
ハヤカワ: 私自身もTwitterをやっていて、いわゆるインフルエンサーと呼ばれることもありますけど、少しずつ発信していくことは心掛けています。
堀江: 一人ひとりが働きかけることが、SNS時代は大事です。政治家のツイートにリプを飛ばしている人はせいぜい何十人なので、それほど多くはないです。ということは、何十人のうちの1人になれれば、意見は聞いてもらえますよね。僕もクソリプだと思いながら、自分がディスられると「こんな意見の奴いるんだ」といちいちムカつきます。
ハヤカワ: (笑)。政治家もあまり陳情に来る人がいないから、行けばわりと話を聞いてもらえるみたいですね。
堀江: 特に自分が居住している選挙区の国会議員のところに行くと、聞いてくれますよ。もっと身近な区議会議員や市議会議員も、国会議員とつながっています。彼らもネタを探していますよ。
ハヤカワ: 自分が輝く場所を探しているのですね。議員に働きかけるチャレンジもしていきたいです。
堀江: そういう地道な活動が花開くんじゃないかな。たまたまアプローチをした国会議員の先生が応援してくれたとして、その人が厚生労働大臣になったら一気に動きますよね。僕も、たまたま宇宙開発で頑張ってロビー活動をしていたら、平将明先生がよく話を聞いてくれました。大田区が地盤で、9月の内閣改造で宇宙担当の内閣府副大臣になりましたよ。
ハヤカワ: すごい。そんなことがあるのですね。
堀江: もともと知っている方で、最初は宇宙のことをそんなに知らなかったけど、働きかけていたら北海道の工場にもわざわざ視察に来てくれました。「すごいね、これは推進しないといけない」と言ってくれて。彼がやろうとしていることにも合致しているので、菅義偉官房長官にお願いをして、宇宙担当に入れてもらったそうです。それで副大臣ですから、実質的には平さんがトップみたいなものなので、よかったなと思っています。
僕らが考えている宇宙開発を日本で広める活動は、これで加速すると思います。いろいろなところに話をして、たまたま平さんに響いたからで、やはり行動すると身を結びますね。
ハヤカワ: それが子宮頸がんをはじめとする予防医療にも波及して、いつか実る日が来てほしいなと思います。
堀江: 子宮頸がんは、思春期の女性に対して定期接種の積極的勧奨を再開することが、まず一里塚です。これが大前提で、他にもいろいろやらないといけないことがあります。
例えば、日本ではまだ承認されていない9価ワクチンを認めること。HPVの悪性度の高いものから9種類のワクチンが混合された9価ワクチンが、まだ日本では承認されていません。おそらくHPVワクチンの副反応問題が社会問題化したことで、厚生労働省がペンディングしているのは間違いないでしょう。
他にも男子にも打つとか、もっと年齢を広げて無償でワクチンを打てるようにするなど、いろいろ実現すべきことはありますが、まずは定期接種の積極的勧奨を再開することですね。これには絶対に政治家の覚悟が必要です。諸外国はみんな政治家が覚悟を持って接種を再開しています。
ハヤカワ: まずは自分の周りからですね。私も頑張ります。そんな一歩から広がっていったらいいなと思っています。
堀江: 最後に言っておきたいことはありますか。
ハヤカワ: 最近は生理用品の周辺や、そこから広がって性教育についてさまざまなインプットをしています。でも、どうしても大手企業が市場を占有していたりとか、法律の制約などがあって、やはり政治家に働きかけたり、ロビイングしないといけないなあと感じていました。私は生理用品業界を変えていけるように頑張っていきます。ぜひ皆さんの中からも、政治にアプローチしてくれる人が増えたらいいなと思っています。
堀江: 一緒にアプローチさせてください。ありがとうございました。(終わり)
著者プロフィール
田中圭太郎(たなか けいたろう)
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。雑誌・webで警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピックなど幅広いテーマで執筆。「スポーツ報知大相撲ジャーナル」で相撲記事も担当。Webサイトはhttp://tanakakeitaro.link/
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