「ヤフー・LINE」対「GAFA」は間違い? 本当のターゲットは金融業界だ!:小売・流通アナリストの視点(2/4 ページ)
経営統合を発表したヤフーとLINE。各報道ではGAFAと比較した“過小評価”が目立つが、筆者の見解は違うところにある。ヤフーの持つ決済機能や携帯キャリアであるソフトバンクとの相乗効果を加味すれば、今回の統合でまず影響が及ぶのは金融業界だと筆者は想定している。それはいったいなぜなのか――小売・流通アナリストの中井彰人氏が鋭く切り込む。
ユーザーの「財布の中身」をチェックできる仕組み
だから何だ、と思うかもしれないが、これがデータプラットフォーマーの王道の戦略である。例えば、あるYahoo! IDの検索履歴とソフトバンク携帯の位置情報、そしてPayPayの購買履歴、Yahoo!ショッピングの購買履歴を統合するだけでも、その人の生活が垣間見ることができることは想像がつくはずだ。特にキャッシュレス決済の情報を取得することは、これまでは把握できなかった、「グループ外での顧客のお金の使い方」までも蓄積することができるため、ビッグデータとしての価値が飛躍的に高まったといっていいだろう。
IDでくくったさまざまな行動の履歴を統合すれば、その人の生活や考え方が分かるようになる。これをビッグデータとして活用してマネタイズしようというのがプラットフォーマーの本質である。ここにLINEの持つSNSやLINE Pay、付随するサービスの履歴が統合されることの重要性は言うまでもないはずだ。ヤフー+LINEの強みは、ヤフー(+ソフトバンク)+LINEのサービスが、国内消費者の滞在時間が最も長いプラットフォーマーになれる可能性を持っているということである。形だけでいえば、Google(検索)、Amazon(ショッピング)、Facebook(SNS)を統合したIDをドメスティックに実現する可能性がある、という言い方もできなくはない。
米中プラットフォーマーの経営資源からみれば、周回遅れの「井の中の巨人」かもしれないが、小なりといえども1億人超という規模の日本市場において、このように統合的なデータを収集できるとしたら、ID単位の分析に適したビッグデータを一定量収集できる可能性がある。ID単位でのマーケティングが可能になってくれば、新しいデータ活用やビジネスを生み出せる可能性がある。マザーマーケットが貧弱である日本のプラットフォーマーにも、「重複による深掘り」という活路はあるのではないだろうか。
関連記事
- 「アメリカンイーグル」年内に国内全店舗を閉店へ 背景にはユニクロの陰
「アメリカンイーグル」が2019年末までに国内全33店舗を閉店すると発表。12月18日から、段階的に閉店していくという。背景には日本市場の特異性やアメカジの不調など、さまざまな事情が絡み合う - 「給与を上げれば退職者は減る」は本当か 経営層の考える「退職対策」と現場の乖離(かいり)が明らかに
「給与を上げれば退職者が減る」と考える会社役員は多い。しかし、給与の上昇は本当に退職率を下げる効果はあるのだろうか。トランスの行った調査で役員層と従業員の意識の違いが明らかになった。 - 経産省、2014年の増税以降に“買いたたき”した企業を発表 リクルート、大東建託ら 担当者は「安心して通報を」
経済産業省は10月23日、2019年9月末までの消費税転嫁対策に関する取り組みの状況を公式Webサイト上で発表した。14年4月に消費税が8%になってから、適切に増税分を転嫁して支払っていなかった企業もリスト化して公表された。 - GAFAへの反乱? 自ら「個人情報」を企業に差し出す人たち
巨大プラットフォーマーによる個人情報収集が問題化している。サービスがパーソナライズされて便利になる一方、パーソナルデータを抜き取られる現状に疑問を持つ人も多い。政府を中心に、制度構築の機運も高まっているが、まだまだ具体策は見えない。そんな中、抜き取られるだけではなく、自ら企業に情報を提供する流れが出てきた。 - ファミマが「大人が食べるお子様ランチ」を発売 地域密着の商品開発
ファミマが「大人が食べるお子様ランチ」を発売する。開発コンセプトは加盟店のアンケートで決めた。ファミマは地域密着の商品開発を進めている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.