中国が政治利用、韓国は規制をもくろむ「ハリウッド映画」市場のインパクト:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
11月に公開された『アナと雪の女王2』など、ハリウッド映画には話題作が多い。そんな中、ハリウッド映画を巡って、中国と韓国の騒動が相次いで報じられた。その影響力を政治利用しようとする中国、制限しようとする韓国。それぞれの思惑とは?
ハリウッド映画の“占拠”を恐れる韓国
一方で、お隣の韓国では、中国のようにハリウッドの影響力を利用するのとは違って、なんとか国内でその影響力を削ごうとしていることが話題になっている。
11月23日、韓国でも『アナと雪の女王2』が封切られた。その人気ぶりはすさまじく、上映開始から10日間で6120万ドルの興行収入を記録。これは米国を含む北アメリカ、そして中国に次ぐ興行成績だという。
すると、この人気が思わぬ騒動に発展する。ソウルの市民団体「公共福祉委員会」が、ソウル中央地検にウォルト・ディズニー・コレア社を告訴したのである。同団体は、子どもたちが熱狂している『アナと雪の女王2』が法律違反だと言うのだ。
どういうことか。韓国の独占禁止法では、韓国国内の個人や企業が、それぞれの分野でマーケットシェアの50%を超えると「市場支配活動」と指定される。そして同団体は、ディズニーが「映画館を独占し、短期間で莫大な利益を稼ごうと企て、消費者の選ぶ権利を制限している」と批判。映画については、どれほどの占拠率が違法になるのか数字の規定はないが、非常に独占的であると問題視されたのだ。
事実、『アナと雪の女王2』は、公開日に、韓国の劇場の88%以上を「占拠」するほどの人気だったという。そんなこともあって、地元の政治家などからも規制の議論が出た。ハリウッドの影響力が韓国人を「洗脳する!」という趣旨なのかどうかは分からないが、少なくとも韓国の子どもたちを支配しかねないと恐れたということだろう。
ただ反対に、例えば「ハリウッド映画」の占拠率(上映館や1日に上映する回数など)で上限を定めてしまうと、映画館などの経営側から苦情が出る可能性がある。韓国の議会はそんなことお構いなしのようで、ハリウッド映画などの占拠率を50%以下に規定する法案を審議中だと報じられている。
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