日本が狙われる ロシアのドーピング処分で暴れる「クマさん」の危険:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
ロシアが五輪などの大会から4年間追放される処分が決まった。このことは、私たちと「関係ない」で済まないかもしれない。東京五輪と日本企業が「クマさん」による非常に危険な脅威にさらされる可能性があるからだ。「クマさん」が何をするのかというと……
平昌五輪に襲い掛かったファンシー・ベア
そして彼らは、18年に平昌の冬季五輪でもサイバー攻撃による妨害工作を実施している。
どんな攻撃だったのかというと、まず何カ月も前から関係各所へのサイバー攻撃を行い、公式サイトや公式アプリが被害を受けていた。不具合も確認されている。大会初日には、平昌オリンピックスタジアムの自動入場ゲートが使えなくなり、運営側はゲートを手動に切り替えざるを得なくなったという。
さらに、開会式の前には公式サイトが数時間にわたって使えなくなり、チケットの手配などにも支障が出た。会場周辺のWi-Fiも使えない状況があったという。直ちに調査を行ったセキュリティ会社なども、最終的には、これらの攻撃が情報を盗むような攻撃ではなく、データを消去して運営に不具合をもたらそうとしていたと結論付けた。
そして専門家らは、ファンシー・ベアによる攻撃の動機がドーピング問題で冬季五輪から国として締め出されたことに対する“報復”だったと分析している。ちなみに、そのために使われたマルウェア(悪意のある不正なプログラム)は、「オリンピック・デストロイヤー」と名付けられている。五輪を破壊するのが動機だったということだ。
そんな攻撃を行ったロシアが、平昌に続いて、再び五輪という世界的なスポーツイベントから締め出されることになるのだ。台湾のサイバーセキュリティ企業の関係者も、筆者に「ロシアが平昌のときと同じようになったら、東京もサイバー攻撃を受けることは間違いないでしょう」と述べているし、米国の元諜報機関関係者も「またドーピングで恥をかかされたら、ロシアが大会を妨害しようと動くに決まっている」と不吉な指摘をしていた。
つまり、東京五輪のタイミングで、ファンシー・ベアなどのロシア政府系ハッカーが日本をサイバー攻撃する可能性があるのだ。すでに中国や北朝鮮の政府系ハッカーらによる、東京五輪に向けたサイバー攻撃の準備は始まっているといわれている。数多くのフィッシング・メールやスピアフィッシングメールが確認されているし、筆者もセキュリティ関係者がダーク(闇)ウェブ(地下サイト)などで検知しているフィッシングメールの実物などをいくつも目にしている。
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