「また違法残業」の電通 過労死のリアルを理解しないトップに問う“責任”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/5 ページ)
長時間労働削減に取り組んでいたはずの電通が、また違法残業で是正勧告を受けていたと報じられた。長時間労働が死に直結するというリアリティーを社員が持てないのはトップの認識の甘さ。「過労死」という言葉の歴史と重みを考えれば、「また違反」はありえない。
……が、長時間労働推奨者たちには届きません。彼らは、仕事好き=かっこいい、忙しい人=仕事ができる人、と考えているので、脳とか心臓とか自分でも見たことのない自分の臓器が壊れるとか、全くイメージできない。
過労死はヤバイと知覚できても、過労死とは突然死で、あるとき突然心臓や脳が壊れることだと知覚できないのです。
そしておそらく……、電通のお偉い人たちも同様に、長時間労働が死に直結するというリアリティーが持てないのでしょう。本来、そういう人たちには従業員や部下のマネジメントを絶対させてはいけないのに、今回の「また違反」案件はトップの認識の甘さと言わざるを得ません。
“再発”について山本社長はどう思っているのか? ぜひともご意見を伺いたいところです。
「過労死」という言葉が生まれた背景にある“悲しみ”
そもそも「過労死=KAROSHI」という言葉の裏には、不慮の死で大切な人を失った家族たちの心に鬱積(うっせき)する、悲しみが存在します。
さかのぼること今から半世紀前の1970年代後半。中小企業の管理職層で心筋梗塞発症が急増しました。
73年の第1次オイルショックで景気が冷え込み、国が助成金を出して雇用を守ろうとした政策が裏目に出た結果です。不景気の間は国からの助成金で社員を解雇しなかった企業が、景気回復で需要が急激に拡大した際、人を増やすのではなく、人数を変えず長時間労働させることで生産性を向上させようとしたのです。
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