「また違法残業」の電通 過労死のリアルを理解しないトップに問う“責任”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(5/5 ページ)
長時間労働削減に取り組んでいたはずの電通が、また違法残業で是正勧告を受けていたと報じられた。長時間労働が死に直結するというリアリティーを社員が持てないのはトップの認識の甘さ。「過労死」という言葉の歴史と重みを考えれば、「また違反」はありえない。
「また違反」なんてありえない
くしくも、同法で報告が義務付けられた「過労死白書」が発表された2016年10月7日、大手広告代理店に勤務していた24歳(当時)の女性(高橋まつりさん)が15年12月に投身自殺したのは「直前に残業時間が大幅に増えたのが原因」とし、労災認定されたと報じられました。
「過労死」という言葉が生まれてから40年。お嬢さんを「仕事に奪われた」遺族の無念が社会に知らされたのです。
大切な命が奪われ、その理不尽な死に悲しむ遺族の思いを考えれば、「また違反」なんて事態はありえません。前述した通り、「長時間働きたくて仕方がない」社員を守るためにも、長時間労働は淘汰(とうた)しなきゃだし、それができない会社は、会社として存在させてはいけないのです。
仕事を「人生を豊かにする最高の手段」にするためにも、「長時間労働は命を削る悪しき働き方」「休息をとったほうが効率が上がる」という常識をもっともっと社会に浸透させなきゃです。微力ですけど、私も地道に訴え続けていきますので、どうかお付き合いのほどを……。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)。2019年5月、新刊『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)発売。
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